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中日新聞掲載の大学記事

2017.01.24

東山80年 命の記録 椙山女学園大生 動植物園の歴史 映像化

■ゾウの殺処分危機/ゴリラショー 

 東山動植物園(名古屋市千種区)が3月に開園80周年を迎えるのに合わせ、園に眠っていた貴重な過去の動画や写真を交えた映像記録が完成した。制作したのは、園に隣接する椙山女学園大(同区)で映像ジャーナリズムを専攻する学生たち。取材を加え、開園当初のにぎわいや戦時中の危機、人気を博した動物など80年の歩みを伝える力作だ。3月から園で上映される。 (河北彬光)

 ゾウやシマウマが悠々と運動場を歩き、その周りには大勢の人だかり。学生が作った映像記録は、開園した1937(昭和12)年ごろの場面で始まる。園で保管され、ほとんど公開されてこなかった動画だ。

 文化情報学部の栃窪優二教授のゼミ生10人が園の依頼に応じて昨年9月から制作。動画や写真の提供を受け、「いのちを未来につなぐ」とのテーマで22分にまとめた。

 戦時中、軍の命令で猛獣の殺処分を迫られながら、ゾウの「マカニー」「エルド」の2頭を守り抜いた逸話は今なお語り継がれる。映像では2頭が戦後にショーをしたり、夏に浴衣を着たりして人気を集めた姿を紹介。60年代に行われた世界でも珍しい「ゴリラショー」は、ゴリラがバーベルを持ち上げたり、飼育員に膝枕をされてくつろいだりする姿など、今では見られない名場面を収めている。

 栃窪教授のゼミは2008年から園と連携し、動物などの映像を制作してウェブサイトで公開してきた。今回の映像には、13年のアジアゾウ「さくら」の誕生を追ったドキュメンタリーも織り交ぜ、園が担う種の保存の大切さも伝える。

 学生が取材や撮影、リポート、ナレーションを分担し、今月19日に完成させた。ディレクターで3年の井後ゆいなさん(21)は「古い映像には驚きや大切な歴史がいっぱいある。命がつながり、今があることを知ってほしい」と話す。

 2月にサイト「バーチャルひがしやま動物園&植物園」で先行公開し、3月中旬から園の動物会館で上映を始める。制作を依頼した園広報の瀬戸耕二さん(43)は「東山の長い歴史と今の姿を濃縮してくれた」と感謝する。

 ▼東山動植物園 1918(大正7)年に初の名古屋市立動物園として開設された「鶴舞公園付属動物園」が前身。37年3月、現在地へ移転して今の名称で開園した。41年ごろには動物が1000頭を超え、東洋屈指の規模に。戦時中は殺処分、閉園も経験した。現在は国内最多の約500種(計1万2600頭)の動物を飼育する。

(2017年1月24日 中日新聞夕刊11面より)

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