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中日新聞掲載の大学記事

2009.07.22

飛べないテントウムシ 『生物農薬』に活用期待

 名古屋大の研究グループは、テントウムシの羽を作る遺伝子を発見し、それを応用して、飛べないテントウムシを作り出すことに初めて成功した。このテントウムシを、害虫のアブラムシを食べる「生物農薬」として活用すれば、さらに効果が期待できるという。

羽作る遺伝子発見し応用 名大大学院助教ら成功

 名大大学院生命農学研究科の新美輝幸助教(資源昆虫学)と大学院生大出高弘氏らのグループで、英昆虫科学専門誌(21日付電子版)に掲載される。

 昆虫の羽形成の中心遺伝子は「ベスティジアル(vg)遺伝子」と呼ばれる。これまではショウジョウバエでしか見つかっていなかったが、グループは、遺伝子配列の一部にショウジョウバエと似た部分を見つけ出し、テントウムシのvg遺伝子であることが分かった。

 その上で、遺伝子のDNAの指令を伝えるリボ核酸(RNA)を分解して働かないようにするため、同じ配列をした人工のRNAを幼虫に注入すると羽のない成虫になった。

 このテントウムシは、アブラムシを食べるなど、羽がない以外は通常と同じだった。

 グループによると、2006年にノーベル賞を受賞した「RNA干渉法」と呼ばれるこの方法は遺伝子を直接、組み換えないため、生態系に影響は与えず、交尾しても通常のテントウムシが生まれるという。

 新美助教は「世界中で化学農薬による環境汚染が問題になっている。飛べないテントウムシのような新しい生物農薬ができれば、農業に寄与する可能性がある」と話している。

(2009年7月22日 中日新聞朝刊3面より)
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