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中日新聞掲載の大学記事

2015.10.10

血中がん細胞 効率検出 名大など装置開発 転移の早期発見可能に

 がん治療後に血液中を流れて転移を引き起こす血中循環がん細胞(CTC)を生きたまま検出する「単一細胞分離・回収装置」を、名古屋大大学院工学研究科の新井史人教授(マイクロ・ナノシステム工学)と愛知県がんセンターなどの研究グループが開発した。実用化されれば、転移がんの早期発見や治療効果の検証に役立つと期待され、5年以内に医療機器の薬事申請を目指す。新井教授らが9日、愛知県庁で会見した。

 がん検査は画像診断や、体に針を刺して細胞組織を取る針生検が一般的だが、体への負担やコスト面に課題がある。循環がん細胞の数が多ければ転移の可能性が高いと分かるため、血液採取だけで検査できる装置を国内外メーカーが開発している。しかし、循環がん細胞は血液1ミリリットル中にある全6億個の細胞のうち、1個程度と希少であることから、検出精度が低かった。

 研究グループは直径18マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリの1000分の1)の微細な円柱形のマイクロポストを、7マイクロメートル間隔で無数に立てたシリコンゴム製のマイクロ流体チップを開発。このチップ上に血液を流すと、赤血球や血小板など小さな血球細胞はマイクロポストの隙間を通り抜けて排除されるが、15〜30マイクロメートルの循環がん細胞は引っ掛かって残る。この細胞を発光させ、1個ずつ自動で回収することに成功した。

 人から注射器で採取した血液5ミリリットルを30分で検査できる。県がんセンターで抗がん剤を投与している乳がん患者の臨床試験では、循環がん細胞が1週間で倍増したことが分かった。

 県がんセンター愛知病院臨床研究検査科の中西速夫部長は「細胞へのダメージが少なく、効率よく回収できる。循環がん細胞を回収しても転移部位は分からないが、画像診断で早期発見につながる」と話した。

(2015年10月10日 中日新聞朝刊34面より)

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