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中日新聞掲載の大学記事

2015.09.13

父娘の物語 まだ序章 初出場の栄 1回戦敗退 60キロ級

 指導者と父の心情が入り交じった。「完全に勝てる選手なら自分がつかなかったけど。負けたとき、他のコーチに責任を取らせられない」。日本代表の栄和人総監督は、長女である女子60キロ級の栄のセコンドに立った理由を説明した。

 初出場の栄は「自分としては平常心で臨めた」。隣のマットで戦う米国選手への大声援が響く中、第1ピリオド(P)で4点を先行。後半は相手のペースに引きずり込まれた。総監督は「世界選手権や五輪は独特の雰囲気。弱い選手はのまれちゃう。私もそういうときがあった」と思いやった。

 左膝の痛みで8月に満足な練習を積めなかった。父は厳しい決断を迫った。「選考会で次点の選手も米国に帯同している。もし駄目なら代われ」。栄は受け入れず、大会前に至学館大や現地で自分を追い込んで「息が上がる練習は積めている」とマットに上がった。

 小中学生時代に全国を制した選手が多い至学館大で、高校から競技を始めた栄は異色の存在。愛知・至学館高から同級生の48キロ級女王、登坂絵莉らの姿勢に刺激を受けて猛練習に励み、非五輪階級ながら世界のひのき舞台に立った。「まだまだ。その一言に尽きるね」と総監督。父と娘のレスリング人生はまだ続く。 (ラスベガス・鈴木智行)

(2015年9月13日 中日新聞朝刊31面より)

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