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中日新聞掲載の大学記事

2015.01.14

津波避難 危険避け誘導 愛知工科大准教授 スマホ用のナビ開発

 巨大地震に備え、愛知工科大(蒲郡市)の板宮朋基・准教授(画像処理学)は「津波等避難行動支援システム」を開発した。目的地までの最短経路を示すだけの従来型のナビと異なり、津波の到達予想時間などを表示し、危険な場所を避けながら、避難場所まで誘導してくれる。今年秋、蒲郡市で実証実験を目指す。 (坂口千夏)

 このシステムは、エリアメールのように、気象庁の緊急地震速報や津波警報が発令されると、衛星利用測位システム(GPS)機能の付いたスマートフォンやタブレット端末にダウンロードしておいた専用アプリが自動的に立ち上がる。

 自治体のハザードマップ情報などを基に、地図上に現在地と避難場所、津波の到達予想時間や現在地の標高も表示。津波の浸水予想地域や、地震で倒壊する危険性が高い建物やブロック塀がある道などは事前に登録されているため、危険な場所へ向かうと文字や音声で知らせる。

 災害時に通信網が途絶えても、事前に取り込まれたデータを基に作動する。現場に土地勘のない観光客やビジネス客でも高台へ逃げられるようにする。

 板宮准教授は「東日本大震災では、大川小学校(宮城県石巻市)など、高台から低地に向かって津波にのまれた例もある。『こっちへ行ってはいけない』と危険を避ける情報を分かりやすい形で伝えたかった」と話す。

 2012、13年には、全国で最も高い津波が想定された高知県黒潮町で、土地勘のない学生らを対象に実証実験した。海岸近くから2キロほど離れた高台まで、アプリの使用、不使用によって、到着時間は昼間で7分以上、夜間では15分以上の差が出た。

 スマホの誤操作や、電池の消耗が激しいなどの課題がはっきりしたほか、スマホも地図も持たない学生は、現地の避難誘導サインも少なく、津波浸水区域を横切っていたことも分かった。

 蒲郡市での実証実験では、自転車による避難や、災害発生時からの時間経過の表示、10分後の浸水域の予測と利用者の到達可能範囲の表示などを検証したい、としている。

 板宮准教授は「システムの構築や維持コストを回収するため、観光案内など平時での運用方法も必要。早期実用化を目指したい」と話している。

(2015年1月14日 中日新聞朝刊県内版より)
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