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中日新聞掲載の大学記事

2014.11.25

ライチョウ 未来に残そう 椙山女大など 記録映像、ネットで公開

 絶滅が危ぶまれる「ニホンライチョウ」を1年にわたって追ったドキュメンタリー作品「ライチョウの未来」を、信州大(長野県松本市)と椙山女学園大(名古屋市千種区)が共同制作した。氷点下10度以下の過酷な雪山で、ライチョウ研究の第一人者が撮った貴重な映像で、インターネット上の動画サイトで公開した。

 信州大の中村浩志名誉教授(67)=鳥類生態学=が、昨年夏から今年9月にかけて北アルプス南部・乗鞍岳(岐阜、長野県)で撮影した。雪の中に体を埋め、強風や天敵から身を守る姿や、ふ化したヒナが成長する1年間の生態が収められている。夕日を浴び、白い冬羽がピンクに染まった珍しい姿もみられる。

 中村名誉教授は毎年、年間80日にわたり標高2800メートルの高山帯でライチョウの調査をしている。椙山女学園大の栃窪優二教授(映像ジャーナリズム)が、ライチョウを一級のドキュメンタリー素材として、ゼミの学生に編集方法を学ばせるため撮影を持ち掛けた。学生は、50時間以上の映像を27分30秒に編集しナレーションを付けた。

 ヒナは、半数以上がふ化後1カ月以内に、キツネやテンなどに襲われたり悪天候で衰弱したりして死ぬとされる。中村名誉教授は昨年夏、世界で初めてケージ(鳥かご)に夜間誘導する保護活動に取り組み、保護した母子3組18羽すべてが生き残った様子も記録している。

 民放での勤務経験がある栃窪教授は「中村名誉教授が持っていた膨大な写真資料も使い、人を恐れないライチョウの特徴をとらえることができた。テレビでもめったに見られない本格的な映像」と話す。

 ライチョウは、約30年前には国内で3000羽ほどいたが、2007年までに2000羽を切ったとみられている。中村名誉教授は「トキやコウノトリのようになってからでは遅い。今、ケージによる保護や人工繁殖に手を付けなければいけない」と動画を通し、ライチョウの現状を訴えている。

【ニホンライチョウ】 ライチョウの仲間で最も南におり、中部地方の高山帯に生息する。長野、岐阜、富山各県の県鳥で国指定の特別天然記念物。環境変化や地球温暖化などで生息数を減らしている。日本人の山岳信仰から「神の鳥」として大切にされたため、人を恐れないという。雷が鳴るような荒天時に活発に活動することが名前の由来ともいわれる。

(2014年11月25日 中日新聞朝刊29面より)
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