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2014.01.29
東山動物園と岐阜大 ゾウで成果 繁殖機会 ふんでつかむ
東山動物園(名古屋市千種区)と岐阜大(岐阜市)が、希少動物の繁殖を進める研究を続けている。29日で1歳を迎えたアジアゾウの雌「さくら」の誕生は、研究の成果。母ゾウの性ホルモンの濃度変化を、ふんを調べることによって把握し、順調な出産成功につなげた。(北村剛史)
野生動物を飼育下で繁殖させるには排卵や発情の周期、妊娠期間などを把握する必要がある。採血すれば性ホルモンの濃度が分かるが、動物のストレスが大きく、作業も危険なため、頻繁な採血は困難だった。
そこで楠田哲士・岐阜大准教授(35)=動物園動物繁殖学=は、ふんに着目した。役割を終えた性ホルモンは肝臓などで代謝され、化学構造の似た物質に変化して、排せつされる。ふんの中から、この物質を抽出して調べれば、血液に比べて正確性は劣るものの、頻繁にデータをとることで性ホルモンの濃度変化を把握できるようになった。
今回の「さくら」誕生では、母ゾウのふんの調査によって、出産の1年前に、妊娠の可能性が高いと判断できた。体の大きなゾウは外見からは判断しにくく、早期段階で妊娠を把握することはなかなかできない。早期把握により、カルシウムなど母ゾウに必要な栄養剤の投与や、出産方法の準備が可能になった。
最終的に血液検査で出産日をほぼ特定。前脚と後ろ脚のそれぞれ1本をチェーンで固定して動きを制限する方法で出産準備を整え、無事に赤ちゃんを誕生させた。
さくらはすくすくと育ち、誕生時に130キロだった体重は625キロになっている。
東山動物園の茶谷公一飼育第一係長(46)は「東山としてゾウの妊娠は初めての経験。ふんのデータで母ゾウの状態を把握することができ、計画的な出産準備を進められた」と振り返る。
東山動物園では、他の希少動物でもふんの調査で性ホルモンの増減を把握。コアラやニシローランドゴリラの排卵周期をほぼつかんだ。
同動物園で出産例のないホッキョクグマは、雄と雌が別に暮らし、繁殖時だけ一緒になる習性がある。茶谷係長は「研究のおかげで雄と雌を一緒にするタイミングが分かる。赤ちゃんを期待したい」と話す。
楠田准教授は「正確性をさらに高め、絶滅が懸念される動物の繁殖につなげたい」と意欲を見せる。
(2014年1月29日 中日新聞夕刊11面より)
野生動物を飼育下で繁殖させるには排卵や発情の周期、妊娠期間などを把握する必要がある。採血すれば性ホルモンの濃度が分かるが、動物のストレスが大きく、作業も危険なため、頻繁な採血は困難だった。
そこで楠田哲士・岐阜大准教授(35)=動物園動物繁殖学=は、ふんに着目した。役割を終えた性ホルモンは肝臓などで代謝され、化学構造の似た物質に変化して、排せつされる。ふんの中から、この物質を抽出して調べれば、血液に比べて正確性は劣るものの、頻繁にデータをとることで性ホルモンの濃度変化を把握できるようになった。
今回の「さくら」誕生では、母ゾウのふんの調査によって、出産の1年前に、妊娠の可能性が高いと判断できた。体の大きなゾウは外見からは判断しにくく、早期段階で妊娠を把握することはなかなかできない。早期把握により、カルシウムなど母ゾウに必要な栄養剤の投与や、出産方法の準備が可能になった。
最終的に血液検査で出産日をほぼ特定。前脚と後ろ脚のそれぞれ1本をチェーンで固定して動きを制限する方法で出産準備を整え、無事に赤ちゃんを誕生させた。
さくらはすくすくと育ち、誕生時に130キロだった体重は625キロになっている。
東山動物園の茶谷公一飼育第一係長(46)は「東山としてゾウの妊娠は初めての経験。ふんのデータで母ゾウの状態を把握することができ、計画的な出産準備を進められた」と振り返る。
東山動物園では、他の希少動物でもふんの調査で性ホルモンの増減を把握。コアラやニシローランドゴリラの排卵周期をほぼつかんだ。
同動物園で出産例のないホッキョクグマは、雄と雌が別に暮らし、繁殖時だけ一緒になる習性がある。茶谷係長は「研究のおかげで雄と雌を一緒にするタイミングが分かる。赤ちゃんを期待したい」と話す。
楠田准教授は「正確性をさらに高め、絶滅が懸念される動物の繁殖につなげたい」と意欲を見せる。
(2014年1月29日 中日新聞夕刊11面より)