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中日新聞掲載の大学記事

2013.11.18

人の声?いいえ合成 美少女キャラ、ナビ・・・進化 名工大チーム研究

■感情豊か 技術無料公開 広がる利用

 コンピューターの「声」が進化を続けている。その最先端を走っているのが、名古屋工業大(名古屋市昭和区)の徳田恵一教授(52)が率いる研究チーム「国際音声技術研究所」だ。同じ言葉でも、ワンタッチで怒った声になったり、沈んだ調子に変わったり。こんな音声合成技術が、カーナビや携帯電話の音声アプリから、オタク文化華やかなアニメ業界にまで進出している。(相坂穣)

 大学の正門前に設置された大型モニターの中で、女性キャラクターが来訪者を迎える。チームが2011年に開発した「メイちゃん」。カフェテリアへの道案内から雑談まで、親切な口調で問い掛けに答えてくれる。

 「人間が話しているみたいでしょ。昔のSF映画に出てきたロボットの機械的な声とは違う」。徳田教授が自慢の技術を説明する。

 従来の技術は、人間の声優にさまざまなパターンの会話を読み上げてもらい、それを大量に蓄積した音声データベースをそのまま使って声を作っていた。

 これに対して、徳田教授らは、声優の口や喉の形状といった断片的なデータを特殊な数学理論で処理。喜怒哀楽の場面で最適な声の大きさ、トーンを選んで発声するシステムを世界に先駆けて1995年に発表した。技術の大部分は、ネット上で無料公開した。

 小さな容量のデータで音声を合成できるため、スマートフォン(多機能携帯電話)にも搭載可能だ。トヨタ自動車やパナソニック、ヤマハなどとの共同研究が次々と実現し、製品開発に応用されている。10月下旬にはカラオケ大手ジョイサウンドが、通信カラオケで誰でも上手に歌えるように導くリードボーカルの歌声に使い始めた。

 「さとうささら」は東京の大手アニメショップ「アニメイト」の関連会社が、チームの技術を採用して完成させた美少女キャラクター。ささらをはじめ3人のキャラクターの声をファンが合成して楽しめるソフトが、9月末に発売された。

 画面上のつまみで「怒り」や「悲しみ」「元気」の度合いを調節して、情感たっぷりに文章を読んだり、歌ったりしてもらえる。サンプル版がネット上で公開されている。

 チームは学生、教員総勢30人。メイちゃんや、ささらのプロジェクトに積極的な李晃伸准教授(40)は「まじめな工学研究と、アニメなどオタク文化への貢献」の両立を誓う。「若い世代も、アニメやゲームを地道な研究のモチベーション(動機)にしてくれる。世界に注目される成果をどんどん発信したい」

(2013年11月18日 中日新聞朝刊1面より)
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