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2013.07.28
若者語で憲法いいじゃん 国民=俺たち 惨禍=ひどいこと
■愛大生が口語訳本
愛知大法学部のゼミで憲法を学ぶ4年生の塚田薫さん(24)=名古屋市名東区=が、憲法の全条文を若者風の言葉に“翻訳”した単行本「日本国憲法を口語訳してみたら」(幻冬舎)が26日発売された。テンポのいいノリと語感が同世代に「いいね」と好評。改憲論議が再燃しそうな雰囲気の中、憲法を勉強し直す参考書の1つになるかもしれない。(河郷丈史)
塚田さんが口語訳を思い付いたのは昨年春で、友人に憲法の条文を何げなく軽い口調で言い換えて披露したところ、「なかなかおもしろくない?」と盛り上がった。若者の話し言葉に訳した条文をインターネットの掲示板に書き込むようになった。
例えば、憲法全体の理念を掲げる前文。「日本国民は」を「俺たちは」、「惨禍」を「ひどいこと」と表現したら、こうなった。
<俺たちはちゃんとみんなで選んだトップを通じて(中略)みんなが好きなことできるようにするよ>
<また戦争みたいなひどいことを起こさないって決めて、国の主権は国民にあることを、声を大にしていうぜ>
ネットの書き込みには「ヒップホップの歌詞みたい」「すんげーいいやつに諭されている感じ」とコメントが殺到。ネット上で次々に転載された「超口語訳」が編集者の目に留まり、今回の出版の話が持ち上がった。
本には条文と口語訳を対比させてある。「『日本国憲法』はどうやってつくられたの?」など、塚田さんのコラム5本も掲載。改憲議論の焦点となる戦力不保持の9条も「なんでそんなに重要なの?」と題して取り上げた。
9条は解釈が分かれる大事な条文だけに「口語訳では、特に慎重に言葉を選んだ」と塚田さん。9条第1項の原文は「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し・・・」となっているが、塚田さんはこう言い換えた。
<俺たちは筋と話し合いで成り立ってる国どうしの平和な状態こそ、大事だと思う。だから国として、武器を持って相手をおどかしたり、直接なぐったり、殺したりはしないよ。もし外国となにかトラブルが起こったとしても、それを暴力で解決することは、もう永久にしない。戦争放棄だ>
憲法をきちんと読んだのは大学に入学してから。「世の中はいろんな人の利益が絡み合っている。それがぶつかり合うから、憲法のようなルールが必要なんだ」と感じた。参院選の自民圧勝で改憲に焦点が当たる中での出版。塚田さんは「改憲とか護憲とか関係なく、多くの人に憲法や社会を考えてもらえるきっかけになれば」と話している。本は1155円。
■比べてみると
▽日本国憲法前文(一部)の口語訳
俺たちはちゃんとみんなで選んだトップを通じて、俺たちと俺たちのガキと、そのまたガキのために、世界中の人たちと仲よくして、みんなが好きなことできるようにするよ。
また戦争みたいなひどいことを起こさないって決めて、国の主権は国民にあることを、声を大にしていうぜ。それがこの憲法だ。
そもそも政治っていうのは、俺たちがよぉく考えて選んだ人を政治家として信頼して力を与えているもので、本質的に俺たちのものなんだ。あれだ、リンカーンのいった「人民の、人民による、人民のための政治」ってやつ。
この考え方は人類がみんな目標にするべき基本であって、この憲法はそれにしたがうよ。そんで、それに反するような法律とかは、いっさい認めないぜ。
▽原文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基(もとづ)くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
(2013年7月28日 中日新聞朝刊33面より)
愛知大法学部のゼミで憲法を学ぶ4年生の塚田薫さん(24)=名古屋市名東区=が、憲法の全条文を若者風の言葉に“翻訳”した単行本「日本国憲法を口語訳してみたら」(幻冬舎)が26日発売された。テンポのいいノリと語感が同世代に「いいね」と好評。改憲論議が再燃しそうな雰囲気の中、憲法を勉強し直す参考書の1つになるかもしれない。(河郷丈史)
塚田さんが口語訳を思い付いたのは昨年春で、友人に憲法の条文を何げなく軽い口調で言い換えて披露したところ、「なかなかおもしろくない?」と盛り上がった。若者の話し言葉に訳した条文をインターネットの掲示板に書き込むようになった。
例えば、憲法全体の理念を掲げる前文。「日本国民は」を「俺たちは」、「惨禍」を「ひどいこと」と表現したら、こうなった。
<俺たちはちゃんとみんなで選んだトップを通じて(中略)みんなが好きなことできるようにするよ>
<また戦争みたいなひどいことを起こさないって決めて、国の主権は国民にあることを、声を大にしていうぜ>
ネットの書き込みには「ヒップホップの歌詞みたい」「すんげーいいやつに諭されている感じ」とコメントが殺到。ネット上で次々に転載された「超口語訳」が編集者の目に留まり、今回の出版の話が持ち上がった。
本には条文と口語訳を対比させてある。「『日本国憲法』はどうやってつくられたの?」など、塚田さんのコラム5本も掲載。改憲議論の焦点となる戦力不保持の9条も「なんでそんなに重要なの?」と題して取り上げた。
9条は解釈が分かれる大事な条文だけに「口語訳では、特に慎重に言葉を選んだ」と塚田さん。9条第1項の原文は「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し・・・」となっているが、塚田さんはこう言い換えた。
<俺たちは筋と話し合いで成り立ってる国どうしの平和な状態こそ、大事だと思う。だから国として、武器を持って相手をおどかしたり、直接なぐったり、殺したりはしないよ。もし外国となにかトラブルが起こったとしても、それを暴力で解決することは、もう永久にしない。戦争放棄だ>
憲法をきちんと読んだのは大学に入学してから。「世の中はいろんな人の利益が絡み合っている。それがぶつかり合うから、憲法のようなルールが必要なんだ」と感じた。参院選の自民圧勝で改憲に焦点が当たる中での出版。塚田さんは「改憲とか護憲とか関係なく、多くの人に憲法や社会を考えてもらえるきっかけになれば」と話している。本は1155円。
■比べてみると
▽日本国憲法前文(一部)の口語訳
俺たちはちゃんとみんなで選んだトップを通じて、俺たちと俺たちのガキと、そのまたガキのために、世界中の人たちと仲よくして、みんなが好きなことできるようにするよ。
また戦争みたいなひどいことを起こさないって決めて、国の主権は国民にあることを、声を大にしていうぜ。それがこの憲法だ。
そもそも政治っていうのは、俺たちがよぉく考えて選んだ人を政治家として信頼して力を与えているもので、本質的に俺たちのものなんだ。あれだ、リンカーンのいった「人民の、人民による、人民のための政治」ってやつ。
この考え方は人類がみんな目標にするべき基本であって、この憲法はそれにしたがうよ。そんで、それに反するような法律とかは、いっさい認めないぜ。
▽原文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基(もとづ)くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
(2013年7月28日 中日新聞朝刊33面より)