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2013.07.03
魚は脳で季節を感知 サケ 秋産卵のナゾも解明?
■名古屋大「センサー」発見 水産業への活用期待
魚類が日照時間の変化を脳の一部で感じ、季節に適応していることを、名古屋大トランスフォーマティブ生命分子研究所の吉村崇教授らのグループが発見した。秋にしか産卵しないサケの繁殖行動の謎が解明される可能性があり、産卵を制御できれば水産業への活用も期待される。2日、英オンライン科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載した。
哺乳類は目、鳥類は脳でそれぞれ日照時間の変化を感じ、脳下垂体の付け根の中継地点に情報伝達し、季節を認識することが分かっている。しかし、魚類の脳には中継地点がなく、変温動物なのに、例えばサケがどうして毎秋に産卵するのか分からなかった。
グループは、秋に繁殖期を迎えるサケの仲間のヤマメを使い、哺乳類と鳥類の脳で季節認識に働くホルモンに注目。魚類に特有で脳の底にある「血管のう」と呼ばれる器官にホルモンが集中して発生していた。
ヤマメの脳から取り出した血管のうに、長く光を照らすほどホルモン分泌は増加した。血管のうを除去したヤマメは、繁殖期の秋になっても生殖腺がほとんど発達しなかったため、血管のうが光を感じて季節を認識し、繁殖活動を制御するセンサーの働きをしていることが分かった。血管のうは、300年以上前に英国の解剖学者が発見し、研究が進められてきたが、その役割は明らかになっていなかった。
吉村教授は「ある季節しか産卵しない生物の繁殖を人工的に制御できれば、食糧供給の問題解決につながる。今後の研究で一歩でも近づけたい」と話している。
(2013年7月3日 中日新聞朝刊33面より)
魚類が日照時間の変化を脳の一部で感じ、季節に適応していることを、名古屋大トランスフォーマティブ生命分子研究所の吉村崇教授らのグループが発見した。秋にしか産卵しないサケの繁殖行動の謎が解明される可能性があり、産卵を制御できれば水産業への活用も期待される。2日、英オンライン科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載した。
哺乳類は目、鳥類は脳でそれぞれ日照時間の変化を感じ、脳下垂体の付け根の中継地点に情報伝達し、季節を認識することが分かっている。しかし、魚類の脳には中継地点がなく、変温動物なのに、例えばサケがどうして毎秋に産卵するのか分からなかった。
グループは、秋に繁殖期を迎えるサケの仲間のヤマメを使い、哺乳類と鳥類の脳で季節認識に働くホルモンに注目。魚類に特有で脳の底にある「血管のう」と呼ばれる器官にホルモンが集中して発生していた。
ヤマメの脳から取り出した血管のうに、長く光を照らすほどホルモン分泌は増加した。血管のうを除去したヤマメは、繁殖期の秋になっても生殖腺がほとんど発達しなかったため、血管のうが光を感じて季節を認識し、繁殖活動を制御するセンサーの働きをしていることが分かった。血管のうは、300年以上前に英国の解剖学者が発見し、研究が進められてきたが、その役割は明らかになっていなかった。
吉村教授は「ある季節しか産卵しない生物の繁殖を人工的に制御できれば、食糧供給の問題解決につながる。今後の研究で一歩でも近づけたい」と話している。
(2013年7月3日 中日新聞朝刊33面より)