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中日新聞掲載の大学記事

2013.04.09

街角の彫刻 魅力紹介 北名古屋市が案内本

■初心者目線で Q&Aや鑑賞法 名芸大卒業生ら制作

 北名古屋市が、市内各所にある彫刻作品を紹介する初めてのガイド本「しむしむ」を発行した。芸術への関心を高めようと地元の名古屋芸術大と連携して街角を中心に67の彫刻を飾っているが、市民になじみが薄い。そこで芸大の卒業生らが、タイトルに「楽しむ、親しむ、愛(いと)おしむ」の意味を込めて制作。ユニークな彫刻芸術の入門書になっている。(添田隆典)

 写実的な裸婦像や馬の頭部の石像。さらには、時計や玩具が埋め込まれ「記憶の声」と題されたガラスのオブジェ…。街角の景色に溶け込んでいるが、思わず「何だろう」と足が止まる。

 1990年、当時の旧西春町が芸大美術学部前の通りを「アートエリア」に位置付け、芸大で指導する彫刻家の作品を置いたのがきっかけ。その後、名古屋江南線や名鉄西春駅前といった県道にも県の占用許可を得て学生や全国公募で選抜された作品が飾られた。今では67を数える。

 ただ、市民からは「なぜ、彫刻があるのか」といった声が寄せられ、認知度は高いとはいえない。そこで、市が芸大にPRを依頼。版画や絵画といった「平面表現」を担当する非常勤講師の片山浩さん(41)と、教え子ら20代の卒業生3人が協力を名乗り出た。

 片山さんは個展のチラシなどを手掛けたことがあり、本のデザインに興味があった。しかし、卒業生を含めて彫刻は専門外。「だからこそ、初心者と同じ目線で取り組めた」と片山さん。

 すべての作品を巡り、写真と地図を掲載。彫刻の作者である芸大の教授や専攻する学生への取材を基に、80ページにまとめた。

 「なんで裸なの?」。ガイド本の最初のページで、裸婦像に投げ掛けられた問い。答えは「根本的な人間性や、素の姿を表現できるから」。Q&Aのコーナーでは、これらの素朴な質問を扱っている。

 さらに、人体像と同じポーズをまねたり、作品の素材や形を触って比べたりする鑑賞方法を提案。作者の好きな音楽や愛読書を紹介し、創作の源を探る試みもしている。

 ガイド本は制作に5カ月かけ、1月末に完成。「平面表現」助手の鈴木恵実さん(23)は「彫刻の見方がもっと自由になるはず」と自信を見せる。

 市は、国の緊急雇用創出事業の補助金350万円を活用し、制作費用の全額を負担。3000部刷り1部を市民に無料配布する。(問)市経営企画課=電0568(22)1111

(2013年4月9日 中日新聞朝刊尾張版より)
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