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中日新聞掲載の大学記事

2013.04.05

被災こえて薬剤師へ 石巻の高橋さん 名城大合格

■亡き恩師の夢を継ぎ「日米懸け橋」も目標

 東日本大震災で自宅が被災した宮城県石巻市の高橋奈央さん(18)が、名古屋市天白区の名城大薬学部に合格した。被災者を対象に入学費と6年間の学費を免除する同大の制度を利用し、薬剤師になる勉強に励む。中学時代に英語を教わり、親交していた米国人英語指導助手のテーラー・アンダーソンさん=当時(24)=が津波に遭って亡くなり、高橋さんは、アンダーソンさんが目指した「日米の懸け橋」になるのも目標だ。(伊藤隆平)

 2011年3月11日。海岸から2キロほどの木造二階建ての自宅にも津波は押し寄せ、一階が水没して住めなくなった。両親が働いていた魚市場も壊滅。魚市場は国や宮城県の支援で再開したが、両親の収入は減り、自宅の修理費もあって家計の余裕はなくなったという。

 1歳のころからアトピー性皮膚炎の症状がある高橋さんは、日ごろ使っている薬に興味が湧き、中学のときから薬剤師になる夢を持っていた。被災者への支援が手厚い大学をインターネットで調べて名城大を見つけ「家計を少しでも助けようと受験勉強に集中した」。3月2日、インターネットの合格発表を見て両親と歓喜した。

 08年から石巻市で英語を教えていたアンダーソンさんは震災が起きた時、勤務していた学校で子どもたちを避難させた後、津波にのみ込まれた。津波の跡から見つかったかばんには高橋さんの手紙が入っていて、任期を終えた後はバージニア州に高橋さんを招く約束もしていた。

 アンダーソンさんの両親は、震災後に石巻市を訪ね、娘が生前に仲良くしていた高橋さんに感謝の気持ちを伝え、名城大の合格祝いには銀のブレスレットをプレゼントしてくれたという。

 震災前の2月、高橋さんに届いたアンダーソンさんの手紙には「帰国後も日本語を勉強し、米国にある日本企業に勤めたい」と書かれ、「私も外国人とコミュニケーションがとれるように、英語の勉強に力を入れたい」と高橋さん。

 4日には両親、妹とキャンパスを見学し、天白区のマンションで一人暮らしを始める。5日の入学式を前に「日米の懸け橋であり続けたかったアンダーソンさんの夢はかなっていない。私が受け継げるように頑張ります」と語った。

(2013年4月5日 中日新聞朝刊県内版より)
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