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中日新聞掲載の大学記事

2008.09.18

一緒に楽しもうよ 中京大で10・18キッズ五種競技主催 陸上七種日本女王 中田有紀

 陸上女子七種競技の日本記録保持者・中田有紀(31)=日本保育サービス=が自ら発起人となり、新たな陸上大会を愛知県豊田市の中京大で10月18日に開催する。小学生が対象(定員200人)で、種目は50メートル走や走り幅跳び、やり投げなど5種目に挑戦するペンタスロン(五種競技)。混成競技を体験してもらい、その魅力を知ってもらうのが目的で、日本のクイーン・オブ・アスリートは「まずはやってみて」と参加を呼び掛けている。

面白さ伝えたい

 女王の思いが形になる。中田が自ら企画したイベントは「キッズ・アスレチックフェスティバル」。初心者大歓迎の“体験型陸上大会”だ。

 「2、3年ほど前から子どもたちを対象にやりたいと思っていたんです。まずは競技に触れてもらう機会になれば」

 対象は小学1−6年生。中田の練習拠点である中京大のグラウンドで50メートル走や走り幅跳びの5種目の記録を得点化するペンタスロンに挑戦してもらう。やり投げではプラスチック製のやりを使用。50メートル障害も子ども用の低いハードルを使う。安全に、かつ、楽しく。大会の目的は何より、「混成競技を知ってもらうこと」だ。

 「子どもたちにとって(混成競技が)目指してもらえる種目になったらいいな、と。でも、そのためにはまず、知ってもらわないと始まりませんから」

 走る、跳ぶ、投げる。女子の七種競技、男子の 十種競技ともに陸上のすべての要素が試される混成競技は欧米では人気が高いが、日本ではマイナーの域を脱していない。知ってほしい。触れてほしい。純粋な思いを行動に移したのは7月末。短い準備期間ながら中京大や豊田市などの協力を仰ぎ、“突貫工事”で実現にこぎ着けた。練習の合間を縫っての普及活動。根底には第一人者としての自覚がある。

 「前は自分の記録を伸ばすことを考えていました。今は全体のことを考えている。この面白さをどう伝えようか、と」

 昨夏、大阪で開かれた世界選手権。大観衆の前で試合ができた喜びも転機になった。「日本でもこれだけ盛り上がれるんだ、と思った」。過去にはバス清掃のアルバイトで生計を立てるなどマイナー競技の悲哀を味わった。7種目も練習するのは肉体的にもきつい。それでも、今も続けている。

 「つらいだけじゃない。何種類もできるなんて、楽しいですよ」

 当日は初心者も楽しめるよう、中田や地元の有志でつくるクラブチーム「東海デカスロン」が実技指導もする。要項やプログラムも手作りのお手製大会。クイーン・オブ・アスリートの情熱が、すそ野を広げる一歩となる。 (寺西雅広)

ロンドンへ集中

 次世代への“伝道師”として大会を企画した中田だが、もちろん、自身も選手として「これから」を見据えている。アテネに続く出場を目指した北京五輪は冬に痛めた左ふくらはぎの影響もあって切符を逃したが、今はロンドン五輪に気持ちを切り替えて練習中だ。

 「北京が駄目になって、すぐ次、と思った。やり続けていくことが大事だと思う」

 今後は9月20日の中京大土曜記録会と26日からの全日本実業団(山形)で走り幅跳びなどに臨み、10月の群馬リレーカーニバルで七種競技に出場。来年の世界選手権(ベルリン)出場に必要な標準記録B(5900点)突破を目指す。

 ▼混成競技 1人で数種類の種目に挑み、記録を得点に換算して総合得点を競う。女子七種競技はヘプタスロンとも呼ばれ、100メートル障害、走り高跳び、砲丸投げ、200メートル、走り幅跳び、やり投げ、800メートルの7種目を2日間で行う。

 走、跳、投のオールラウンドな能力と体力が要求され、優勝者には「クイーン・オブ・アスリート」の称号がつく。

 男子の混成競技は十種(デカスロン)。五輪では80年モスクワ大会まで女子は五種競技だったが、84年ロサンゼルス大会から七種に変わった。

 ▼中田有紀(なかた・ゆき) 1977(昭和52)年3月10日生まれの31歳。京都府向日市。167センチ、55キロ。中京大4年から七種競技を専門とし、その年の日本インカレで優勝。02年に日本選手権を制し、04年に5962点の日本記録を樹立。アテネ五輪で日本女子混成競技としては40年ぶりの代表に選ばれた。日本選手権は7連覇中。

(2008年9月18日 中日スポーツ11面より)
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