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2013.03.07
混ぜるだけで不斉触媒 名大グループ アルツハイマー薬に道
■有機物×金属「黄金比」発見
有機物と金属を一定の割合で混ぜるだけで、製薬などに必要な不斉触媒を作り出すことに、名古屋大の研究グループが成功した。従来は化学反応を利用して分子をブロックのように組み立てる必要があると考えられていた。独化学会誌「アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション」の電子版に7日、発表した。
化学反応を利用する従来の方法は手間と費用がかかり、産業に応用する際の課題となっている。応用が進めば、製造に不斉触媒が不可欠なアルツハイマー治療薬などにつながる可能性がある。
不斉触媒を作る新たな方法を見つけたのは、大学院工学研究科の石原一彰教授、波多野学准教授、堀部貴大大学院生。グループは市販の有機物「光学活性ジオール」とマグネシウムを3対2の割合で混ぜ合わせた。すると、自然に結びついて「超分子」と呼ばれる塊になった。
この塊を触媒に使ったところ、不斉触媒としてよく働くことが分かった。混ぜ合わせる割合を変えて作った塊は、不斉触媒として働かなかった。
石原教授は「有機物とマグネシウムを混ぜる『黄金比』を試行錯誤で見つけることができた。ほかの有機物と金属の組み合わせでも黄金比を見つければ、不斉触媒を作れると思う」と話している。
【不斉触媒】 同じ分子式でも右手と左手のように鏡に映した関係になっている有機化合物のうち、片方だけを作る際に使われる。化学反応を進める役割を担う。1960年前後のサリドマイド薬害は、サリドマイドの成分分子のうち必要な方だけを作れず左右が混合していたためとされている。名古屋大の野依良治特別教授は金属原子を含んだ不斉触媒を世界に先駆けて作り、ノーベル賞を受賞している。
(2013年3月7日 中日新聞朝刊29面より)
有機物と金属を一定の割合で混ぜるだけで、製薬などに必要な不斉触媒を作り出すことに、名古屋大の研究グループが成功した。従来は化学反応を利用して分子をブロックのように組み立てる必要があると考えられていた。独化学会誌「アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション」の電子版に7日、発表した。
化学反応を利用する従来の方法は手間と費用がかかり、産業に応用する際の課題となっている。応用が進めば、製造に不斉触媒が不可欠なアルツハイマー治療薬などにつながる可能性がある。
不斉触媒を作る新たな方法を見つけたのは、大学院工学研究科の石原一彰教授、波多野学准教授、堀部貴大大学院生。グループは市販の有機物「光学活性ジオール」とマグネシウムを3対2の割合で混ぜ合わせた。すると、自然に結びついて「超分子」と呼ばれる塊になった。
この塊を触媒に使ったところ、不斉触媒としてよく働くことが分かった。混ぜ合わせる割合を変えて作った塊は、不斉触媒として働かなかった。
石原教授は「有機物とマグネシウムを混ぜる『黄金比』を試行錯誤で見つけることができた。ほかの有機物と金属の組み合わせでも黄金比を見つければ、不斉触媒を作れると思う」と話している。
【不斉触媒】 同じ分子式でも右手と左手のように鏡に映した関係になっている有機化合物のうち、片方だけを作る際に使われる。化学反応を進める役割を担う。1960年前後のサリドマイド薬害は、サリドマイドの成分分子のうち必要な方だけを作れず左右が混合していたためとされている。名古屋大の野依良治特別教授は金属原子を含んだ不斉触媒を世界に先駆けて作り、ノーベル賞を受賞している。
(2013年3月7日 中日新聞朝刊29面より)