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2013.01.27
東日本大震災の直後 電離層で高速の「波」 名大グループ観測
東日本大震災直後にオホーツク海の上空250キロの電離層で、秒速6.7キロに達する電子の「波」を、名古屋大太陽地球環境研究所の西谷望准教授と小川忠彦名誉教授らのグループが観測した。国際的な日本の学会誌「アース・プラネッツ・スペース」に近く発表する。
■「予知」研究につながる可能性
電離層は上空90〜1000キロにあり、電子を含む。鏡のように電波をよく反射する。一部の研究者からは、震災前に電離層に異常があったとの報告があり、大規模地震の予知につながる可能性があるとして性質の解明が待たれている。
電離層では、これまでにも秒速3〜4キロの電子の波が観測されているが、6.7キロの高速は初めて。西谷准教授は「縦に揺れた地面の揺れが上空まで伝わり、波になったと考えられる。震災の規模が大きかったため、これだけの速度になった」と説明している。
グループが利用したのは、名大が北海道陸別町で運用する大型短波レーダー装置。現在広く使われている衛星利用測位システム(GPS)装置よりも高速の電子の波がとらえられる。
レーダー装置から電波を発射し、その残響を調べることで電離層の動きを探った。その結果、震災の震源から北へ2000キロ離れたオホーツク海上空250キロの電離層で、発生から15分後に上下に揺れる高速の電子の波をとらえた。今回は、地震発生前の電子の波はとらえられなかった。
GPS装置は、海の上には設置しにくい課題がある。しかし、今回のレーダーは電波を斜めにも発射できるため、海の上空を含む広い範囲が観測できる利点がある。
小川名誉教授は「レーダーの観測網を広げれば、さらに詳細なデータが集まり、電離層と地震の関係の理解が進むかもしれない」と話している。 (中村禎一郎)
(2013年1月27日 中日新聞朝刊県内版より)
■「予知」研究につながる可能性
電離層は上空90〜1000キロにあり、電子を含む。鏡のように電波をよく反射する。一部の研究者からは、震災前に電離層に異常があったとの報告があり、大規模地震の予知につながる可能性があるとして性質の解明が待たれている。
電離層では、これまでにも秒速3〜4キロの電子の波が観測されているが、6.7キロの高速は初めて。西谷准教授は「縦に揺れた地面の揺れが上空まで伝わり、波になったと考えられる。震災の規模が大きかったため、これだけの速度になった」と説明している。
グループが利用したのは、名大が北海道陸別町で運用する大型短波レーダー装置。現在広く使われている衛星利用測位システム(GPS)装置よりも高速の電子の波がとらえられる。
レーダー装置から電波を発射し、その残響を調べることで電離層の動きを探った。その結果、震災の震源から北へ2000キロ離れたオホーツク海上空250キロの電離層で、発生から15分後に上下に揺れる高速の電子の波をとらえた。今回は、地震発生前の電子の波はとらえられなかった。
GPS装置は、海の上には設置しにくい課題がある。しかし、今回のレーダーは電波を斜めにも発射できるため、海の上空を含む広い範囲が観測できる利点がある。
小川名誉教授は「レーダーの観測網を広げれば、さらに詳細なデータが集まり、電離層と地震の関係の理解が進むかもしれない」と話している。 (中村禎一郎)
(2013年1月27日 中日新聞朝刊県内版より)