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中日新聞掲載の大学記事

2012.10.01

男性の筋萎縮難病 頭痛薬が進行食い止め 名大院 マウスで実験

 頭痛の治療薬「ナラトリプタン」が、遺伝子異常による神経系の難病「球脊髄性筋萎縮症(SBMA)」の進行を抑止することを、名古屋大大学院医学系研究科の祖父江元・教授や勝野雅央特任准教授らのグループがマウスを使った実験で突き止めた。30日、米科学誌ネイチャー・メディシン電子版に掲載された。

 SBMAは、有害なタンパク質が男性ホルモンと結合して運動神経に蓄積され、細胞死が進み、全身の筋肉がやせ細るなどの症状が出る。男性のみに発症し、国内に2000人の患者がいる。進行を食い止める治療法は確立されていない。

 グループはSBMAの症状を再現したマウスの脊椎から抽出したマイクロリボ核酸(RNA)を解析。極小なタンパク質「CGRP1」が健康なマウスと比べて5倍多く発生していた。CGRP1が増加すると細胞死が進み、病気を進行させていることが分かった。

 CGRP1の発生を減らすため、さまざまな薬を投与して調べたところ、ナラトリプタンだと発生量が半分以下に減少。寿命が2倍に延び運動機能も改善された。

 ナラトリプタンは、片頭痛の治療薬として一般に使用されているため大型動物の実験を経過する必要がなく、グループは今後ヒトでの検証を進める。祖父江教授は「安全性が確かめられている薬の新たな効果が分かったことは非常に意義がある。できるだけ早く臨床治験に入りたい」と話した。

(2012年10月1日 中日新聞朝刊3面より)
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