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2012.08.28
次世代つなぐ「炭素のかご」 カーボンナノケージ 名大教授 世界初の合成
◆医薬、記録媒体にも期待
炭素と水素の原子だけでできた新しい「かご状」の分子構造物「カーボンナノケージ」の合成に、名古屋大大学院理学研究科の伊丹健一郎教授(有機化学)らのグループが、世界で初めて成功した。英国の化学会誌「ケミカルサイエンス」の電子版に、27日に発表した。薄くて折り曲げられる有機ELテレビの発光素材や、薬を患部の細胞まで運ぶ道具、情報を蓄積する記録媒体など、多様な活用が期待できる。
カーボンナノケージは、炭素原子でできた6角形のベンゼン環が20個つながった構造。直径が50万分の1ミリと極めて小さく、大相撲の力士が腰に巻く「まわし」のような形。形状の特徴から、筒状の炭素ナノ分子構造物「カーボンナノチューブ」同士をつなぐ接続部位として活用し、新たな構造物を生成する際の「鍵の分子」になる可能性がある。
白色でほとんどの溶液に溶け、300度以上の高温でも分解しない。産業技術総合研究所(大阪府池田市)との共同研究では、青色に発光し、光を吸収する性質を持つことが分かった。発光する性質は有機ELテレビへの活用が期待でき、光を吸収する性質は記録媒体に生かせる可能性がある。
また、内部の空洞に異物の分子を取り込めるため、薬の成分を入れて、通常は届きにくい患部の細胞まで運ばせる役割も期待できる。
伊丹教授らは2009年に、カーボンナノチューブを形づくるリング状の基本部位「カーボンナノリング」の合成に成功した。今回は、この技術を応用。10年のノーベル賞受賞者の鈴木章北海道大名誉教授らが発見した「鈴木カップリング」の技術などを使って、ベンゼン環同士をつなぎ合わせ、かご状の構造物を合成した。
伊丹教授は「美しい形の分子で、いろんな分野に活用が広がる可能性がある。次世代の新物質をつくる鍵になるのではないか」と話している。
(2012年8月28日 中日新聞朝刊1面より)
炭素と水素の原子だけでできた新しい「かご状」の分子構造物「カーボンナノケージ」の合成に、名古屋大大学院理学研究科の伊丹健一郎教授(有機化学)らのグループが、世界で初めて成功した。英国の化学会誌「ケミカルサイエンス」の電子版に、27日に発表した。薄くて折り曲げられる有機ELテレビの発光素材や、薬を患部の細胞まで運ぶ道具、情報を蓄積する記録媒体など、多様な活用が期待できる。
カーボンナノケージは、炭素原子でできた6角形のベンゼン環が20個つながった構造。直径が50万分の1ミリと極めて小さく、大相撲の力士が腰に巻く「まわし」のような形。形状の特徴から、筒状の炭素ナノ分子構造物「カーボンナノチューブ」同士をつなぐ接続部位として活用し、新たな構造物を生成する際の「鍵の分子」になる可能性がある。
白色でほとんどの溶液に溶け、300度以上の高温でも分解しない。産業技術総合研究所(大阪府池田市)との共同研究では、青色に発光し、光を吸収する性質を持つことが分かった。発光する性質は有機ELテレビへの活用が期待でき、光を吸収する性質は記録媒体に生かせる可能性がある。
また、内部の空洞に異物の分子を取り込めるため、薬の成分を入れて、通常は届きにくい患部の細胞まで運ばせる役割も期待できる。
伊丹教授らは2009年に、カーボンナノチューブを形づくるリング状の基本部位「カーボンナノリング」の合成に成功した。今回は、この技術を応用。10年のノーベル賞受賞者の鈴木章北海道大名誉教授らが発見した「鈴木カップリング」の技術などを使って、ベンゼン環同士をつなぎ合わせ、かご状の構造物を合成した。
伊丹教授は「美しい形の分子で、いろんな分野に活用が広がる可能性がある。次世代の新物質をつくる鍵になるのではないか」と話している。
(2012年8月28日 中日新聞朝刊1面より)