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中日新聞掲載の大学記事

2011.06.14

「個性派美術館」を行く 岐阜県大垣市

■日本国際ポスター美術館 芸術的な価値、広く発信

 「ポスターを通じて世界平和を希求し、希望に満ちた文化都市を創造するために、この大垣の地に、日本国際ポスター美術館の設立を宣言する」
 こんな理想を掲げ、1996年、岐阜県大垣市に国内唯一のポスター専門館として産声を上げた。芸術的価値、視覚コミュニケーションの手段としての価値を評価し、発信するのが目的。ポスターが美術としての地位を確立している欧米では知られた存在といい、東日本大震災後は海外から応援メッセージが相次いだ。著名アーティストから「募金箱に貼って」と新作も届けられた。

 コレクションは9000点以上。ポーランドを代表するマチエイ・ウルバニッツや、近代ポスターの祖トゥールーズ・ロートレック、東京オリンピックのポスター制作で知られる亀倉雄策の作品など、貴重なものが少なくない。大迫輝通館長や、大垣女子短大で美術を教えていた松浦昇副館長らでつくる草の根の実行委員会が、開館11年前から米国、ドイツなど世界の現代作品を紹介するポスター展を開いていた。グラフィックデザイン界の一流どころに熱心に声をかけ、集め始めたのが、ここまで膨らんだ。

 開館当初は支援企業のビルに入居していたが、大迫館長が学長を務めていた岐阜経済大が情報メディア学科を開設した2008年、同大構内へ移転した。06年にNPO法人となり、地元経済界や主婦らボランティアグループの力を借りて活動を続ける。2年に1度の「大垣国際招待ポスター展」はその1つ。8回目の昨年は、20カ国から世界的コンテストで活躍する約70人のアーティストが参加要請に応えた。毎年開催の「全国高校生ポスターコンクール」も今年で10回目を数え「ポスター甲子園」の名で定着した。

 欧米では商業ポスターだけでなく、社会的主張を伝えるポスターの自費出版も盛んで、街角の広告塔に数多く貼られているという。「絵画と同様に取引もされていて、日本とは随分とらえ方が違います。こうした文化の違いや、ポスターが何を発信しようとしていて、社会背景は何かといったようなことも説明していきたい。いいポスターありますよ、だけではね」と、理事の加藤由朗ディレクターは語る。最近、国内外のアーティストに向け「大震災から未来へ」をテーマに作品制作を呼び掛けた。ポスターだからこそ伝えられる温かい気持ちを、インターネットなどで公開する計画だ。(谷村卓哉)

 岐阜県大垣市北方町5の50、岐阜経済大7号館内。JR大垣駅からバスで約10分。土、日曜と祝日、作業日は休館。見学無料。昨年は約8000人が訪れた。8月10日まで「ポスターの中の子どもたち」展を開催。第10回全国高校生ポスターコンクールのテーマは「むすび」で7月8日まで作品を受け付ける。(問)0584・77・3503

(2011年6月14日 中日新聞朝刊なごや東版)
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