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お知らせ 2025.10.26
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国と国つなぐ夢 諦めぬ 故郷地震 ミャンマー人留学生奮闘

日本での留学生活について話すナインさん=名古屋市千種区で
3月のミャンマー地震で大きな被害が出た中部マンダレー管区出身の愛知淑徳大(愛知県長久手市)1年、ナインさん(21)が、「日本人と外国人をつなぐ存在になりたい」と奮闘している。一時は留学を断念しかけたが、大学による異例の学費免除で続けられることになった。学内外の活動にも積極的な姿に、大学は他の学生の刺激となることを期待する。(竹田佳彦)
倒壊した家屋に舗装が隆起した道路。入学直前の3月28日、ナインさんはミャンマーの惨状を伝えるニュースに目を疑った。故郷の両親や姉弟となかなか連絡がつかず、誰もけがをしていないと分かったのは2日後。「日本にいて何もできずもどかしかった」と振り返る。
新型コロナウイルス禍の2022年、友人の姉が働く日本に興味を持ち、日本語の勉強を始めた。当時は高校を終えても進学の道が閉ざされ、家業の工場を手伝っていた。国内は21年に国軍が起こしたクーデター以降、内戦が続く。徴兵年齢は18歳。同胞に武器を向ける可能性があることへの疑問も膨らんだ。「安心して勉強ができる外国に行きたい」と思うようになったという。
最大都市ヤンゴンの日本語学校を経て23年に来日し、外国ルーツの学生を対象とした「グローバル入試」の1期生として今年4月、愛知淑徳大に入学した。
入学金と前期の授業料は地震前に父親が工場をたたんで工面してくれた。しかし故郷は地震で停電が続き、物流もまひした。母親が営む食堂は再開できず、仕送りは望めない。留学生はアルバイトの時間制限があり、後期の授業料をどうしようかと途方に暮れた。
「帰った方が良いのか」と迷っていた時、教育を受けられず苦労した父親から「しっかり勉強しなさい。国同士をつなげ、教育が受けたい人を助けられる人になってほしい」と背中を押された。
留学生受け入れに力を入れる大学も、支援に動いた。国内の激甚災害で被災した学生が対象の学費免除を、ナインさんにも適用すると決定。今月上旬にはルール自体を見直し、留学生も正規の対象とした。
決定の理由について、大塚英揮副学長は「安心して学んでもらうため」とした上で、留学生の存在が日本人学生にとって新たな学びにつながると言う。「国が違えば育ってきた環境も社会的な背景も違い、刺激がある。学生のネットワークも広がれば」と期待した。
ナインさんは学内イベントに積極的に参加し、海外ルーツの子どもに日本語を教えるボランティアにも取り組んでいる。「日本語が母語じゃない自分だから、教えやすいこともあると思う」といい、こう続けた。「将来、海外ルーツの人と日本人をつなぐような仕事ができたらいいですね」
(2025年10月26日 中日新聞朝刊27面より)