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学生活動  2023.11.21

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ラオスの子に図書室を 南山大生ら 地道に募金活動

ラオスの学校に図書室を贈るために活動する、山口貴史さん(後列左)らBWP愛知のメンバー=名古屋市昭和区の南山大で(酒井博章撮影)

ラオスの学校に図書室を贈るために活動する、山口貴史さん(後列左)らBWP愛知のメンバー=名古屋市昭和区の南山大で(酒井博章撮影)

 本を自由に読めないラオスの子どもたちのため、現地の学校に図書室を整備したい-。南山大(名古屋市昭和区)の学生たちが、3千キロ以上離れたラオス中部、カムワン県にある中高一貫校の生徒らのために募金活動を続けている。同国にはほとんどの学校に図書室がない上、小学校でも中退者が多く、民族間で教育格差もあるという。学生たちは「活動を通じ、ラオスの教育問題に目を向けてほしい」と願う。(酒井博章)

 活動しているのは、2018年に発足した南山大の学生ボランティア団体「BWP愛知」。発足当時のメンバーたちがラオスの現状を知り、「少しでも教育問題の改善につながれば」と募金活動を発案した。現地で図書室づくりや書籍の寄付活動を続ける非政府組織(NGO)「ラオスのこども」(東京)への寄付を通じ、図書室を整備しようと計画した。

 同団体によると、図書室は空き教室を使って整備される。本棚や必要な書籍をそろえるため、1室当たり約30万円が必要という。BWP愛知はチャリティーイベントのほか、大学祭での飲食販売を中心に活動。追加の図書購入費も含めた目標金額を35万円と設定し、支援金集めを進めていた。

 だが20年初頭からの新型コロナウイルス禍で、支援金集めは頓挫。ピーク時に20人以上いたメンバーは一時3人にまで減った。団体の存続も危ぶまれたが、それまでに集めた数万円の支援金が、解散を踏みとどまる理由になったという。現代表の山口貴史さん(22)は「『ラオスのために』と寄せられた思いを、無駄にしたくなかった」と振り返る。

 昨年3月から活動を再開。大々的にイベントができない代わりに、街頭での募金活動に主軸を移した。毎月1回、名古屋市中区の名古屋三越栄店前の路上でラオスの国旗などを持ちながら、買い物客らに支援を呼びかけている。「ラオスは、隣国のミャンマーやタイと比べて認知度が低い。支援していただくには、まずラオスのことを知ってもらうことが重要」(山口さん)と考え、交流サイト(SNS)でも情報を発信する。

 地道な活動が実を結び、目標金額まであと1割未満のところまで来た。副代表の太田千裕さん(22)は「ようやく目標に届き、実際の支援につなげられることがうれしい」と感慨深げに話した。今月の募金活動は25日午後3時からの予定。

■識字率に民族間格差 小学生の2割が中退

 「ラオスのこども」によると、ラオスではおよそ6歳になると小学校に入学し、就学率は100%に近い。だが公用語のラオス語による授業についていけないなどの理由で、卒業せず中退する児童が5人に1人ほどいる。同団体で海外事業を担当する赤井朱子(あかし)さんは「図書を通じ、文字に親しむ機会がほとんど与えられていないことが根底にある」と指摘する。

 同国は大小50の民族でつくる「多民族国家」で、他の言語を使う少数民族ほどラオス語の識字率が低い傾向にある。授業以外で自主的に学ぼうにも、図書室のある学校は全体の1割強しかなく、児童が文字や言葉を習得することを難しくさせている。

 同団体では1982年の活動開始以降、ラオス国内約350の学校に図書室を整備してきた。赤井さんは、南山大生の取り組みに感謝し、「多くの方たちの支援で図書室ができたことを、現地の子どもたちに伝えたい」と話した。

(2023年11月21日 中日新聞夕刊1面より)

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