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お知らせ  2021.06.28

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がん1000人 無料ゲノム検査 藤田医大、治療と研究に活用

 がん細胞の遺伝子変異を調べて効果が見込める薬を探す「がんゲノム医療」で、藤田医科大(愛知県豊明市)が同大病院で手術を受けるがん患者を対象にした無料のがん遺伝子検査を近く始める。検査は病状によっては保険が使えるが、対象が限られ、適用外の場合は数10万円の費用がネックになっていた。(白名正和)

 検査結果は研究と治療の両方に役立てる。対象は現時点で1000人規模を予定。大人数を対象に無料でがん遺伝子検査を実施するのは珍しく、中部地方では初めてという。

 がんは遺伝子の変異が原因となって起こる病気。同じ肺がんでも、患者1人1人の体質や病状の進行によって変異した遺伝子は異なる。がん遺伝子検査では、患者から採取したがん組織を解析し、数10~200以上の遺伝子の変異を調べる。変異遺伝子を特定することで、一般的に使われる抗がん剤よりも効果的な薬を選んで使うことが可能になり、再発の危険性も予測できるという。

 費用は、調べる遺伝子の数や検査方法に応じて異なるが、一般的には数10万円かかる。2019年に一部が保険適用になったが、標準的な治療方法が効かない人や、確立された治療法がない希少がんの人が対象。その他の患者は全額を自己負担しなければならない。

 今回の無料検査の対象は胃がんや肺がんなど組織に腫瘍をつくる固形がん全般で、患者の年齢性別は問わない。がん遺伝子検査の中でも「プレシジョン検査」と呼ばれ、約200の遺伝子を調べる手法を用いる。検査を主導するのは、藤田医科大のがん医療研究センター長代行で、慶応大病院(東京)の副院長を兼務する佐谷秀行氏(腫瘍学)。慶大病院は、先立って大規模な無料検査に取り組んでいる。

 佐谷氏は「がんは人それぞれ、さまざまな表情をしている。遺伝子検査を行うことで詳細を把握することができる」と説明。検査の目的は一義的には治療に関わる研究のレベル向上が狙いだと説明した上で「もちろん解析した遺伝子の情報は、患者の主治医に報告されるので、患者の治療につながる。通常の治療でうまくいかない場合、次の治療選択が増える」と強調した。

 検査の実費は研究費として支出する。藤田医科大の岩田仲生・医学部長は「研究だけでなく患者にとっても重要な検査。よりよい医療を提供するために取り組みたい」と話した。

■がんゲノム医療

 がんの組織を用いて、多数の遺伝子を解析用装置(次世代シーケンサー)で同時に調べ、遺伝子変異を明らかにすることにより、1人1人の体質や病状に合わせて治療などを行う医療。がん遺伝子検査の結果を基に、医師ら専門家がどの薬が効くか協議。厚生労働省によると、保険適用の対象となる検査は、がんゲノム医療の中核拠点病院や連携病院など全国225病院(今年4月1日現在)で受けることが可能で、藤田医科大でも一部検査を実施している。

(2021年6月28日 中日新聞朝刊1面より)

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