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中日新聞掲載の大学記事

お知らせ  2021.01.14

海中でワイヤレス送電 豊橋技科大 無人探査効率化に期待

開発に成功した海中でのワイヤレス給電システム。下部の電極層から上部のドローンに電気が送られライトがついた。ダンパが絶縁体=愛知県豊橋市で

開発に成功した海中でのワイヤレス給電システム。下部の電極層から上部のドローンに電気が送られライトがついた。ダンパが絶縁体=愛知県豊橋市で

 豊橋技術科学大の田村昌也准教授(42)=マイクロ波回路=の研究チームが、海中に設置した充電ステーションから水中探査するドローン(小型無人機)にワイヤレスで電気を送る新たな仕組みの開発に成功した。両方に付けた電極板で送受電できるシンプルな仕組み。実用化されれば、ドローンによるサンゴ礁などの海洋保全調査や日本近海の海洋資源探査の効率化に役立つとみられている。

 研究チームは、スマートフォン内でも利用されている身近な高周波電流が海中を流れる性質を持っていることに着目。海中で拡散してしまう難点があるが、研究チームは海水中に絶縁体を壁のように設け、高周波電流の「通路」を作り出すことを発案した。

 研究チームは実験で、海中に実際に充電ステーションを設置。家庭用送電(50~60ヘルツ)の10万倍近くに変換した高周波電流を充電ステーションから「通路」に流し、電流の8割以上を15センチ離れた場所に置いた電極板に送ることに成功した。

 現在、ドローンによる海中の探査は電池を積んで実施するのが一般的。しかし、潜水や浮上時に大量の電力を消費することもあり、潜水可能な時間が限られる問題がある。

 この技術が実用化されれば、海の外からケーブルで送電を受けている海中の充電ステーションで、電極板を取り付けたドローンを充電できる。理論上は、ドローンが浮上することなく海中で活動しつづけることも可能だ。

 田村准教授は「魚の養殖で水質や飼育環境などをドローンで自動管理する際にも役立てられる。海洋大国の日本で活躍できる技術」と期待している。

 ワイヤレス給電を巡っては電磁コイルを用いた方式なども考えられているが、実用化には至っていない。田村准教授らの研究結果は、世界的に影響力を持つ米国電気・電子学会「IEEE」の学術誌電子版に昨年12月に掲載された。

(2021年1月14日 中日新聞夕刊8面より)

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