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2008.03.24
ショー彩る人材輩出 プロ並みスタジオで磨き
名古屋芸大ミュージカルコース 開設から8年
ミュージカル俳優の養成コースが各地の音楽大学で開設が相次いでいるが、開設八年目の名古屋芸術大のミュージカルコースは、プロ並みの「スタジオ方式」で才能を伸ばし、ショービジネスの世界に即戦力を送り出している。舞台のレベルも向上、昨年は国際コンクールで銅賞に入った。月末の定期公演を控え、練習に熱が入るスタジオを訪ねた。 (長谷義隆)
愛知県北名古屋市にある名古屋芸大音楽学部5号棟。防音ガラス越しにミュージカルコース専用のスタジオをのぞくと、革ジャンを着たミュージシャン井上堯之がにこやかに手を振り、中に招じ入れてくれた。
井上作曲の「移りゆく季節の中で」のコーラスが始まった。
♪悲しみも喜びも、同じ道歩きたい…
主役・準主役5人が奏でる美しいハーモニーに、井上が目を細めた。
午後1時に始まったリハーサルは、昼間のバンド演奏合わせ後、夕方からは衣装を着けたドレス・リハーサルが行われ、午後9時前まで続いた。
元スパイダースのギタリストで作曲家としてテレビ、舞台、映画、ミュージカルなどの音楽を手掛けてきた井上が、客員教授に招かれたのは2001年。「まだ1、2年生しかおらず、これでミュージカルができるのかな。大変だなと思った」と振り返る。「それが、だんだんとレベルがアップして。熱心な学生たちがいとおしくてね。出会いによって人は人になる、と実感しますよ」
ミュージカルコース専任教授で商業劇場の一線で活躍するフリー演出家の森泉博行の働き掛けで、ダンス専用のクッションフロア、音響機器などプロ仕様のスタジオが開設2年目に完成。歌と踊りと芝居の三位一体の俳優教育が本格化した。
ショーダンスの第一人者の名倉加代子も客員教授に参加。この3者の脚本・演出、音楽、振り付けによる上質のオリジナル・ミュージカルを定期公演ごとにつくってきた。舞台美術、照明も本格派。キャンパスから飛び出し、地元の名古屋市をはじめ、岐阜県高山市、金沢市、兵庫県姫路市にも出向いて公演してきた。
昨年5月には韓国の「第1回大邱国際ミュージカル・フェスティバル」に参加し、銅賞に輝いた。ことし9月には浜松市で公演する予定だ。
クラシック畑のように、幼少から専門教育を受けている者はほとんどいない。森泉は「彼女たちの世代にとって、ミュージカルのメロディーライン、リズムは日常的になじんでいて、2年間みっちりけいこすれば、即戦力になる」と指摘する。配役はすべてオーディションで決める実力主義を貫く。
一方で、優秀な卒業生を研究生として残し、舞台を引き締めるソリストに起用して、底上げを図ってきた。
森泉によると、これまで約80人の出身者のうち7割がショービジネスやテーマパークのアクター、音楽産業の仕事に就いているといい、劇団四季には5人が入団。この中には在学中にオーディションに合格し、昨年の「アイーダ」名古屋公演で主役を務めた今井美範がいる。
現役生では3年生宮崎文さん(21)がことし2月の名古屋市文化振興事業団主催のミュージカル「オズの魔法使い」の主役を射止めた。
森泉は「楽譜が読めることが音楽や舞台スタッフの採用条件になっていて、進路が多様化している」と話した。
名古屋芸術大ミュージカル定期公演「Nostalgia〜ショービジネスの魔女たち〜」
27日午後6時半、28日午後3時、名古屋市芸術創造センター。1000円、高校生以下500円。(電)0568(24)5141=同芸大音楽学部演奏課。
(2008年3月24日 中日新聞夕刊7面より)
ミュージカル俳優の養成コースが各地の音楽大学で開設が相次いでいるが、開設八年目の名古屋芸術大のミュージカルコースは、プロ並みの「スタジオ方式」で才能を伸ばし、ショービジネスの世界に即戦力を送り出している。舞台のレベルも向上、昨年は国際コンクールで銅賞に入った。月末の定期公演を控え、練習に熱が入るスタジオを訪ねた。 (長谷義隆)
愛知県北名古屋市にある名古屋芸大音楽学部5号棟。防音ガラス越しにミュージカルコース専用のスタジオをのぞくと、革ジャンを着たミュージシャン井上堯之がにこやかに手を振り、中に招じ入れてくれた。
井上作曲の「移りゆく季節の中で」のコーラスが始まった。
♪悲しみも喜びも、同じ道歩きたい…
主役・準主役5人が奏でる美しいハーモニーに、井上が目を細めた。
午後1時に始まったリハーサルは、昼間のバンド演奏合わせ後、夕方からは衣装を着けたドレス・リハーサルが行われ、午後9時前まで続いた。
元スパイダースのギタリストで作曲家としてテレビ、舞台、映画、ミュージカルなどの音楽を手掛けてきた井上が、客員教授に招かれたのは2001年。「まだ1、2年生しかおらず、これでミュージカルができるのかな。大変だなと思った」と振り返る。「それが、だんだんとレベルがアップして。熱心な学生たちがいとおしくてね。出会いによって人は人になる、と実感しますよ」
ミュージカルコース専任教授で商業劇場の一線で活躍するフリー演出家の森泉博行の働き掛けで、ダンス専用のクッションフロア、音響機器などプロ仕様のスタジオが開設2年目に完成。歌と踊りと芝居の三位一体の俳優教育が本格化した。
ショーダンスの第一人者の名倉加代子も客員教授に参加。この3者の脚本・演出、音楽、振り付けによる上質のオリジナル・ミュージカルを定期公演ごとにつくってきた。舞台美術、照明も本格派。キャンパスから飛び出し、地元の名古屋市をはじめ、岐阜県高山市、金沢市、兵庫県姫路市にも出向いて公演してきた。
昨年5月には韓国の「第1回大邱国際ミュージカル・フェスティバル」に参加し、銅賞に輝いた。ことし9月には浜松市で公演する予定だ。
クラシック畑のように、幼少から専門教育を受けている者はほとんどいない。森泉は「彼女たちの世代にとって、ミュージカルのメロディーライン、リズムは日常的になじんでいて、2年間みっちりけいこすれば、即戦力になる」と指摘する。配役はすべてオーディションで決める実力主義を貫く。
一方で、優秀な卒業生を研究生として残し、舞台を引き締めるソリストに起用して、底上げを図ってきた。
森泉によると、これまで約80人の出身者のうち7割がショービジネスやテーマパークのアクター、音楽産業の仕事に就いているといい、劇団四季には5人が入団。この中には在学中にオーディションに合格し、昨年の「アイーダ」名古屋公演で主役を務めた今井美範がいる。
現役生では3年生宮崎文さん(21)がことし2月の名古屋市文化振興事業団主催のミュージカル「オズの魔法使い」の主役を射止めた。
森泉は「楽譜が読めることが音楽や舞台スタッフの採用条件になっていて、進路が多様化している」と話した。
名古屋芸術大ミュージカル定期公演「Nostalgia〜ショービジネスの魔女たち〜」
27日午後6時半、28日午後3時、名古屋市芸術創造センター。1000円、高校生以下500円。(電)0568(24)5141=同芸大音楽学部演奏課。
(2008年3月24日 中日新聞夕刊7面より)