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2017.01.18
名大発 起業ノススメ 「保守的」脱却 他大生も支援へ
ベンチャー企業を積極的に立ち上げてもらおうと、名古屋大が学生らへの支援を本格化している。既に何人かの学生起業家が生まれているが、新年度から他大学とも連携し、さらに支援を拡大する。大学関連のベンチャー起業件数では東京大などに水をあけられている名大。保守的とされる学生気質に新風をあて“未来のビル・ゲイツ誕生”を後押ししたい考えだ。(社会部・坪井千隼)
名大の支援プロジェクトは「Tongali」。学生や教員が設立したベンチャー企業を対象に2016年度から始めた。最長4年間、名大構内の支援拠点をオフィスとして使える上、起業に詳しい大学職員や経営者の助言を受けられる。このほか、ベンチャーキャピタル(投資会社)と連携し、会社の設立や事業展開のための投資ファンドを発足。起業がテーマのセミナーやコンテストも開いている。
こうした「場所」「人」「金」の支援策の対象を、17年度からは名古屋工業大や岐阜大、三重大など東海地方の大学の学生らにも広げる方針。同時にそれらの大学には支援する側としても関わってもらう。
6人のノーベル賞受賞者を輩出するなど全国的にも高い研究水準を誇る名大だが、14年度の文部科学省調査によると、学生や教員らによる大学発ベンチャーの起業件数は累計で41件。東京大(151件)や京都大(81件)、大阪大(81件)などを大きく下回る。
ただ、名大によると、16年度は先月までで7件と過去最多ペース。うち4件はこれまでほとんど無かった「学生の起業」だという。
プロジェクトを担当する名大の河野廉教授は「この地域はトヨタをはじめ就職先に恵まれ、学生は冒険する必要がない。東京や大阪のようにベンチャー企業の成功例に接する機会も少なかった」と現状を分析し、「ベンチャー育成は、地域の経済活性化につながる上に、学生の教育の面でも有意義。ぜひ推進したい」と先を見据える。
■農業や留学生支援 ビジネスで「夢」を形に
名大発の学生起業家の1人で農学部4年(休学中)の柘植千佳さん(24)=愛知県東郷町=は、農家や食品加工業者と消費者を結び付けるネットサイト「Kodawarin」を運営する計画だ。農家らと相談して「食」に関する商品やサービスを企画し、サイトで購入者を募集。一定数を超えた場合に企画を実行に移す仕組みだ。
現在、進行中の企画は7本。2月上旬にもサイトで購入者の募集を始め、形や色が悪く市場に出せない余剰野菜で作ったピューレの販売などを行う。
「自分で責任を負う生き方をしてみたかった」。柘植さんが起業に関心を持ったのは就職活動中だった2015年夏ごろ。農家や加工業者の話を聞く機会があり、食に対する真剣な姿勢に感銘を受けたことが事業化の出発点となった。
「食には多くの物語がある。サイトを通じて味わってもらえたら」と柘植さん。ネパール直輸入のヒマラヤ岩塩を販売し、売り上げの一部で現地の子どもに給食を提供する企画もある。「5年以内に年商1億円」と目標を掲げる。
名大情報文化学部3年(休学中)の鷲見陽介さん(22)は昨年8月、社会人の友人と留学生向け職業紹介サイトを運営する企業「Harmony For」(名古屋市西区)を設立。英語などで日本の就職活動の仕組みを解説し、企業側から広告費を受け取る。東海地方の大学や語学学校に通う中国やベトナム、ネパールなどの留学生が利用している。
「留学生の多くは卒業後も日本で就職し、暮らすことを希望しているが、自分に合う職場が見つからず帰国しているのが現状。言葉や文化の壁を就業の面からなくしたい」と夢を語る。
(2017年1月18日 中日新聞夕刊11面より)
名大の支援プロジェクトは「Tongali」。学生や教員が設立したベンチャー企業を対象に2016年度から始めた。最長4年間、名大構内の支援拠点をオフィスとして使える上、起業に詳しい大学職員や経営者の助言を受けられる。このほか、ベンチャーキャピタル(投資会社)と連携し、会社の設立や事業展開のための投資ファンドを発足。起業がテーマのセミナーやコンテストも開いている。
こうした「場所」「人」「金」の支援策の対象を、17年度からは名古屋工業大や岐阜大、三重大など東海地方の大学の学生らにも広げる方針。同時にそれらの大学には支援する側としても関わってもらう。
6人のノーベル賞受賞者を輩出するなど全国的にも高い研究水準を誇る名大だが、14年度の文部科学省調査によると、学生や教員らによる大学発ベンチャーの起業件数は累計で41件。東京大(151件)や京都大(81件)、大阪大(81件)などを大きく下回る。
ただ、名大によると、16年度は先月までで7件と過去最多ペース。うち4件はこれまでほとんど無かった「学生の起業」だという。
プロジェクトを担当する名大の河野廉教授は「この地域はトヨタをはじめ就職先に恵まれ、学生は冒険する必要がない。東京や大阪のようにベンチャー企業の成功例に接する機会も少なかった」と現状を分析し、「ベンチャー育成は、地域の経済活性化につながる上に、学生の教育の面でも有意義。ぜひ推進したい」と先を見据える。
■農業や留学生支援 ビジネスで「夢」を形に
名大発の学生起業家の1人で農学部4年(休学中)の柘植千佳さん(24)=愛知県東郷町=は、農家や食品加工業者と消費者を結び付けるネットサイト「Kodawarin」を運営する計画だ。農家らと相談して「食」に関する商品やサービスを企画し、サイトで購入者を募集。一定数を超えた場合に企画を実行に移す仕組みだ。
現在、進行中の企画は7本。2月上旬にもサイトで購入者の募集を始め、形や色が悪く市場に出せない余剰野菜で作ったピューレの販売などを行う。
「自分で責任を負う生き方をしてみたかった」。柘植さんが起業に関心を持ったのは就職活動中だった2015年夏ごろ。農家や加工業者の話を聞く機会があり、食に対する真剣な姿勢に感銘を受けたことが事業化の出発点となった。
「食には多くの物語がある。サイトを通じて味わってもらえたら」と柘植さん。ネパール直輸入のヒマラヤ岩塩を販売し、売り上げの一部で現地の子どもに給食を提供する企画もある。「5年以内に年商1億円」と目標を掲げる。
名大情報文化学部3年(休学中)の鷲見陽介さん(22)は昨年8月、社会人の友人と留学生向け職業紹介サイトを運営する企業「Harmony For」(名古屋市西区)を設立。英語などで日本の就職活動の仕組みを解説し、企業側から広告費を受け取る。東海地方の大学や語学学校に通う中国やベトナム、ネパールなどの留学生が利用している。
「留学生の多くは卒業後も日本で就職し、暮らすことを希望しているが、自分に合う職場が見つからず帰国しているのが現状。言葉や文化の壁を就業の面からなくしたい」と夢を語る。
(2017年1月18日 中日新聞夕刊11面より)