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2015.01.07
築こう 近未来の金沢 建築家3人 計画提案 無秩序な開発 危機感
■LRTが城下周遊 尾張町の木造再生
金沢市尾張町を木のぬくもりが感じられる「木質都市エリア」にし、点在する町家をネットワーク型のホテルとして再生させ、金沢城を囲むようにLRT(次世代型路面電車)で結ぶ−。建築家ら3人が「金沢都市再編計画2014」をまとめた。新幹線時代をにらんだ未来の城下町像ともいえ、行政、NPO関係者を交えた公開討論会を5月ごろまでに開き、機運を盛り上げる。(沢井秀和)
3人は、個性的な建物の仲介で知られる「金沢R不動産」を営み、金沢で町家再生も手掛ける有限会社エン代表で建築家の小津誠一さん(48)、金沢工業大の宮下智裕准教授(46)=建築デザイン学科、東京大の松田達助教(39)=金沢市出身、建築設計学。
3人が尾張町に注目するのは、江戸時代に金沢の商業の中心で、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている東山、主計町とつながり町家、初期コンクリート建築などが残るため。外壁や内装に木材を使ったビル造りなど新しい魅力づくりを提案している。
金沢城公園には、全国の文化財を疎開させる「蔵」を設け、博物・美術館が集まる太平洋側の災害リスクを分散させることを構想。江戸時代に加賀・五代藩主前田綱紀が集めた尊経閣蔵書や百工比照工芸の現代版として、散逸しがちな文化財を集めて保存、研究することも打ちだしている。
町家のネットワーク化は、壊される可能性が高い町家の活用策として提示。改修した町家を客室とし、ネットワーク型のホテルなどとして活用する。工芸と建築を融合させた改修による工芸建築にも挑む。
LRTの整備は、金沢駅、武蔵ケ辻、片町・香林坊の3極に尾張町、広坂を加えたエリアを環状に結ぶ手段として挙げている。
これらの提案は、金沢21世紀美術館で催されている企画展「3・11以後の建築」に当たり、練り上げた。5月までの会期中に美術館で公表し、議論のきっかけづくりをしている。
「北陸新幹線が開通すれば、金沢には首都圏どころか海外の資本も入ってくる。どこにでもある東京近郊の都市と変わらない風景になる可能性がある」。3人にはそんな危機感がある。
卯辰山麓、寺町台も含めて周辺が重要伝統的建造物群保存地区として保全が進む半面、中心部が開発にさらされる可能性が高いとみる。尾張町は歴史的建造物が残るものの、無秩序な駐車場化が進んでいる。
そんな状況を踏まえ、金沢の目指すビジョンを提示する必要があると考えた。エリアを限定した個別の「まちづくり」と、1つの都市として統一感をつなげるという狙いもある。
伝統工芸の技を建築に生かす提案は新しい挑戦。工芸の技を次世代に継承しながら町家を再生させ、まちの魅力アップに結びつける。金沢の近未来を切り開く可能性を秘めている。
小津さんは「町家を工芸も含めたさまざまな手法で改修することが地域を活性化させ、まちづくり、都市づくりにつながる」と強調。今回の計画に、宮下さんは「今ある金沢の魅力を再編していくことになる」と語る。松田さんは「中心部をコンパクトに形成し、車中心から歩行中心のまちに変えるためにLRTの役割は大きい。都心居住型に構造を大胆に変えるきっかけになる」と話している。
(2015年1月7日 北陸中日新聞朝刊27面より)
金沢市尾張町を木のぬくもりが感じられる「木質都市エリア」にし、点在する町家をネットワーク型のホテルとして再生させ、金沢城を囲むようにLRT(次世代型路面電車)で結ぶ−。建築家ら3人が「金沢都市再編計画2014」をまとめた。新幹線時代をにらんだ未来の城下町像ともいえ、行政、NPO関係者を交えた公開討論会を5月ごろまでに開き、機運を盛り上げる。(沢井秀和)
3人は、個性的な建物の仲介で知られる「金沢R不動産」を営み、金沢で町家再生も手掛ける有限会社エン代表で建築家の小津誠一さん(48)、金沢工業大の宮下智裕准教授(46)=建築デザイン学科、東京大の松田達助教(39)=金沢市出身、建築設計学。
3人が尾張町に注目するのは、江戸時代に金沢の商業の中心で、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている東山、主計町とつながり町家、初期コンクリート建築などが残るため。外壁や内装に木材を使ったビル造りなど新しい魅力づくりを提案している。
金沢城公園には、全国の文化財を疎開させる「蔵」を設け、博物・美術館が集まる太平洋側の災害リスクを分散させることを構想。江戸時代に加賀・五代藩主前田綱紀が集めた尊経閣蔵書や百工比照工芸の現代版として、散逸しがちな文化財を集めて保存、研究することも打ちだしている。
町家のネットワーク化は、壊される可能性が高い町家の活用策として提示。改修した町家を客室とし、ネットワーク型のホテルなどとして活用する。工芸と建築を融合させた改修による工芸建築にも挑む。
LRTの整備は、金沢駅、武蔵ケ辻、片町・香林坊の3極に尾張町、広坂を加えたエリアを環状に結ぶ手段として挙げている。
これらの提案は、金沢21世紀美術館で催されている企画展「3・11以後の建築」に当たり、練り上げた。5月までの会期中に美術館で公表し、議論のきっかけづくりをしている。
「北陸新幹線が開通すれば、金沢には首都圏どころか海外の資本も入ってくる。どこにでもある東京近郊の都市と変わらない風景になる可能性がある」。3人にはそんな危機感がある。
卯辰山麓、寺町台も含めて周辺が重要伝統的建造物群保存地区として保全が進む半面、中心部が開発にさらされる可能性が高いとみる。尾張町は歴史的建造物が残るものの、無秩序な駐車場化が進んでいる。
そんな状況を踏まえ、金沢の目指すビジョンを提示する必要があると考えた。エリアを限定した個別の「まちづくり」と、1つの都市として統一感をつなげるという狙いもある。
伝統工芸の技を建築に生かす提案は新しい挑戦。工芸の技を次世代に継承しながら町家を再生させ、まちの魅力アップに結びつける。金沢の近未来を切り開く可能性を秘めている。
小津さんは「町家を工芸も含めたさまざまな手法で改修することが地域を活性化させ、まちづくり、都市づくりにつながる」と強調。今回の計画に、宮下さんは「今ある金沢の魅力を再編していくことになる」と語る。松田さんは「中心部をコンパクトに形成し、車中心から歩行中心のまちに変えるためにLRTの役割は大きい。都心居住型に構造を大胆に変えるきっかけになる」と話している。
(2015年1月7日 北陸中日新聞朝刊27面より)