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中日新聞掲載の大学記事

2015.01.04

老朽橋 ロボが診断 打撃音を映像化、危険ひと目で

 名古屋大と熊谷組などは橋の各部をハンマーでたたいたときの音から強度を測る劣化診断ロボットの開発を始めた。中部電力が発電所の診断用に開発した、音の違いを映像上の円で示す「音カメラ」を搭載。人が近寄れない橋の裏側にも磁石でくっついて回り込み、劣化の兆候を見つける。橋をたたいて回るロボットとセットで開発、5年後をめどに実用化を目指す。

■中電の技術、名大など応用へ

 打撃音を分析してインフラの劣化診断に使うのは初めて。2012年12月に9人が死亡した中央自動車道笹子トンネル(山梨県甲州市−大月市)の天井板落下事故以来、インフラの老朽化対策が喫緊の課題となっている。

 政府の国土強靱(きょうじん)化基本計画に沿って、名大が熊谷組など4社と共同研究を始めた。

 熊谷組によると打撃音が大きく、音程が高いほうが劣化が進んでいるとの法則性がある。法則性を確認するため、名大の舘石和雄教授は橋の接ぎ目に見立てた金属を圧力で徐々に損傷させ、ハンマーでたたいた音がどう変わるかデータを集めている。これまでの調査で「音の高さが変化していくのは確か」と話している。

 音を解析する「音カメラ」は01年、中電が火力発電所内からの異音を調べるために、熊谷組、信州大と開発。とらえた音を画面上に円で示し、円の大きさで音量を、色で音の高低を表す。

 熊谷組はカメラを搭載した試作ロボットをほぼ完成させている。大きさは縦38センチ、横幅、高さともに28センチ、重さは20キロ。8つの車輪に強力な磁石を取り付け、橋げたの側面をよじ登ったり、橋の裏を逆さになって動いたりしても落ちない仕組みにした。

 電池で連続4時間稼働できるようにするのが目標。15年度には橋をたたいて音を出すロボットも開発を始める予定。

 熊谷組は、インフラの点検会社や補修コンサルタントなどに使ってもらうことを想定。熊谷組技術研究所の大脇雅直副所長は「調べようがなかった橋の危険を音が教えてくれる」と実用化に意欲を見せる。橋の診断ロボットに成功した後は、トンネル用ロボット開発も視野に入れている。

(2015年1月4日 中日新聞朝刊1面より)
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