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中日新聞掲載の大学記事

2014.11.11

脳内タンパク質 記憶形成に役割 名大教授らマウス実験で発見

 脳の海馬にある「ガーディン」というタンパク質が記憶の形成に重要な役割を果たしていることを、名古屋大の山田清文教授(医療薬学)らの研究グループが、マウスを使った実験で発見した。成果は米科学誌電子版に掲載された。

 実験は普通のマウスと、「ガーディン」の性質が変わるよう遺伝子操作したマウスで物忘れの度合いを比較した。水を張った直径1.2メートルの透明なケースに、直径7センチの浅瀬を設置。毎日ここにマウスを入れると、室内の風景から浅瀬の場所を覚えて早くたどりつくようになる。

 当初はともに10メートル泳いだが、6日目になると、通常のマウスは2メートルでたどり着くように。遺伝子操作したマウスは3.5メートル泳ぎ回ってようやくたどりついた。

 箱の中に入れて電気ショックを繰り返す実験では、通常のマウスは2日目に入れたときに恐怖体験を思い出してしばらく固まっていたが、操作したマウスは間もなく動き回った。

 カギとなったのは、「ガーディン」にリンが結合して起きるリン酸化。記憶に残るような刺激を与えるとガーディンがリン酸化し、神経細胞内で信号の橋渡し役をしていることが分かった。遺伝子操作は、このタンパク質がリン酸化しないようにした。

 山田教授は「恐怖の記憶に影響が出ており、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療などに活用できる可能性がある。記憶力を良くすることもできるようになるかもしれない」と話している。

(2014年11月11日 中日新聞朝刊33面より)
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