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2014.11.08
バイオリン人生の集大成 名音大名誉教授 伊藤美佐子が自主公演
■ラロ「スペイン交響曲」をフル演奏
東海地方初の音楽大、名古屋音楽大・大学院の教授を2004年まで40年間務めたバイオリニストの伊藤美佐子名誉教授=愛知県知立市=が15日、「コンチェルト弾きといわれた演奏家人生の集大成にしたい」と東日本大震災復興支援コンサートを自主開催。情熱的なバイオリン協奏曲の大曲として知られるラロの「スペイン交響曲」を、セントラル愛知交響楽団と披露する。 (長谷義隆)
「演奏会の4日後には79歳なのよ」というベテラン。「68歳の教授退任コンサートでは難曲のドボルザーク、73歳の時にはブラームスの協奏曲を弾きました。華やかでいて涙があふれ出るような大人のラロで70代を締めくくりたい」と抱負を話す。超絶技巧を駆使する5楽章ノーカット版だ。1935年、名古屋市生まれ。ソロや室内楽も長年取り組んだが「やっぱり、多彩な音を奏でるオーケストラをバックにコンチェルトを弾く、こんな格好いいことはありませんね。同世代の人たちに元気をお裾分け」とほほ笑む。指揮は名音大時代からの盟友、黒岩英臣。
退任後は音楽の一線から退き「年に数度、有名コンクールの本選前に演奏の最終チェックを頼まれて指導するくらい」の悠々自適の日々。「ふだん練習してなくても、頭の中で音楽が鳴ると、指が動いて弾けるの」という。「ラロを弾くのは19年ぶり。楽譜は自分が長年書き込んだメモで真っ黒。オケとソリスト、指揮者の三つどもえの曲だから、今回はきっちり練習してます」
終戦翌年から音楽人生がスタート。11歳で父から手ほどきを受け「バイオリンに触った最初から音階がとれた」という天賦の才を磨くべく、戦後の混乱期に満員の夜行列車で上京しては、名教師の小野アンナのレッスンを受けた。
東京芸術大を卒業するや母校の菊里高で後進を指導し、開学した名音大に請われて40年間、教授と学内オーケストラのソロ・コンサートミストレスとして活躍。バイオリン奏者を多数輩出している愛知県の音楽振興の一翼を担った。
「同期生は菊里高にピアニストの小林仁、東京芸大にバイオリニストの海野義雄がいます。彼らを含め同期で今も現役で演奏している人は、いないわねえ」と笑う。「震災復興はまだまだ。世のため人のためのコンサートで、夫も応援してくれるからできること。持ち出しは覚悟。収益金の一部を寄託します」
公演は15日午後2時、名古屋・伏見の三井住友海上しらかわホールで。黒岩悠、吉永哲道によるブルッフ「2台のピアノと管弦楽のための協奏曲」も。4000円。(問)伊藤美佐子コンサート実行委員会=電056(681)3837
(2014年11月8日 中日新聞夕刊9面より)
東海地方初の音楽大、名古屋音楽大・大学院の教授を2004年まで40年間務めたバイオリニストの伊藤美佐子名誉教授=愛知県知立市=が15日、「コンチェルト弾きといわれた演奏家人生の集大成にしたい」と東日本大震災復興支援コンサートを自主開催。情熱的なバイオリン協奏曲の大曲として知られるラロの「スペイン交響曲」を、セントラル愛知交響楽団と披露する。 (長谷義隆)
「演奏会の4日後には79歳なのよ」というベテラン。「68歳の教授退任コンサートでは難曲のドボルザーク、73歳の時にはブラームスの協奏曲を弾きました。華やかでいて涙があふれ出るような大人のラロで70代を締めくくりたい」と抱負を話す。超絶技巧を駆使する5楽章ノーカット版だ。1935年、名古屋市生まれ。ソロや室内楽も長年取り組んだが「やっぱり、多彩な音を奏でるオーケストラをバックにコンチェルトを弾く、こんな格好いいことはありませんね。同世代の人たちに元気をお裾分け」とほほ笑む。指揮は名音大時代からの盟友、黒岩英臣。
退任後は音楽の一線から退き「年に数度、有名コンクールの本選前に演奏の最終チェックを頼まれて指導するくらい」の悠々自適の日々。「ふだん練習してなくても、頭の中で音楽が鳴ると、指が動いて弾けるの」という。「ラロを弾くのは19年ぶり。楽譜は自分が長年書き込んだメモで真っ黒。オケとソリスト、指揮者の三つどもえの曲だから、今回はきっちり練習してます」
終戦翌年から音楽人生がスタート。11歳で父から手ほどきを受け「バイオリンに触った最初から音階がとれた」という天賦の才を磨くべく、戦後の混乱期に満員の夜行列車で上京しては、名教師の小野アンナのレッスンを受けた。
東京芸術大を卒業するや母校の菊里高で後進を指導し、開学した名音大に請われて40年間、教授と学内オーケストラのソロ・コンサートミストレスとして活躍。バイオリン奏者を多数輩出している愛知県の音楽振興の一翼を担った。
「同期生は菊里高にピアニストの小林仁、東京芸大にバイオリニストの海野義雄がいます。彼らを含め同期で今も現役で演奏している人は、いないわねえ」と笑う。「震災復興はまだまだ。世のため人のためのコンサートで、夫も応援してくれるからできること。持ち出しは覚悟。収益金の一部を寄託します」
公演は15日午後2時、名古屋・伏見の三井住友海上しらかわホールで。黒岩悠、吉永哲道によるブルッフ「2台のピアノと管弦楽のための協奏曲」も。4000円。(問)伊藤美佐子コンサート実行委員会=電056(681)3837
(2014年11月8日 中日新聞夕刊9面より)