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中日新聞掲載の大学記事

2014.10.28

想像で描き足す力 人間特有 霊長研など チンパンジーは×

 福笑いのように顔の輪郭だけがあり、目や口などが描かれていない絵に、人間の子どもは目などを描き加えられるのに、チンパンジーは描き足しをしないことを、京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の松沢哲郎教授らが発見した。成果は28日、米学術誌電子版に掲載される。

 想像で空白を埋められる力は、さまざまな物に言葉を当てはめて認識する人間の能力につながっているとみられ、人間だけが言語を使えるようになった起源を解明するのに役立つ知見という。

 松沢教授と中部学院大(岐阜県各務原市)の斎藤亜矢准教授、滋賀県立大の竹下秀子教授らは、チンパンジー6匹(大人4匹、子ども2匹)と、人間の1〜3歳の子ども57人で比較した。人間の子どもだけが平均2歳8カ月で、何も無い顔の絵に目、鼻、口を補えるようになった。

 顔の輪郭をなぞることや、すでに描かれている目に重ねて描くことは、人間とチンパンジーは大差なくこなした。松沢教授は「チンパンジーも筆を使いこなして絵を描く能力は高いが、無いものを埋める力だけ完全に欠けていた。人間だけにある能力を明確に示せた」と話している。

 言葉を使うのが苦手な重度の障害や自閉症の子どもも無いものを埋める力が欠けている可能性があるといい、話せるようになる以前の年齢でもこうした症状を早期発見することに、今回の研究手法が応用できないかも探るという。

(2014年10月28日 中日新聞朝刊29面より)
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