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2013.12.25
名大・小澤教授の「不等式」 高精度実験でも成立
物理学で80年以上も信じられてきた「ハイゼンベルクの不等式」が成り立たないことを示して物理学の常識を変えた名古屋大と東北大の研究グループは、測定精度の限界に迫る精密な実験で不等式が破れていることをあらためて示した。ハイゼンベルクの不等式に代えて名古屋大の小澤正直教授が提案する「小澤の不等式」は成立していた。成果は26日付の米物理学会誌電子版に発表される。
実験は、光の波が振動する方向を測った。光の振動は「縦横方向」と「斜め45度方向」の2つの成分を持つ。物理学では両成分とも正しく測るのは無理とされる。
縦横成分を正確に測ると、その影響で波が乱れ、斜め成分が正しく測れないからだ。一方の誤差を下げると他方の誤差が上がる関係で精度に一定の限界がある。その限界を示す式が1927年に提唱されたハイゼンベルクの不等式で、80年以上も正しいとされてきた。
東北大の枝松圭一教授は、波を乱しにくい「弱測定」という高精度の手法で、縦横成分と斜め成分の誤差の関係を測った。その結果、ハイゼンベルクの不等式では1以上になるはずの誤差が実験では0.7になるなど、同不等式が成り立たないことが示された。
一方、小澤の不等式は満たされた。また、小澤の不等式を改良して新しく提案されたブランシアードの不等式も満たしていた。測定精度の本当の限界に近い結果だという。
小澤教授は「精度の限界に迫った意味は大きい。ヒッグス粒子のような素粒子実験の精度向上や、量子暗号通信の実用化にもつながる」と話す。
【ハイゼンベルクの不等式】 独のノーベル賞物理学者ハイゼンベルクが1927年、電子などの極小の世界では、粒子の正確な測定に限界があり、必ず誤差が出るとの「不確定性原理」を提唱。誤差の出方を、不等式で表した。小澤教授はこの式に誤りを発見し、これまで考えられていたよりも誤差が少なくなる例があることを新たな不等式で示した。
(2013年12月25日 中日新聞朝刊3面より)
実験は、光の波が振動する方向を測った。光の振動は「縦横方向」と「斜め45度方向」の2つの成分を持つ。物理学では両成分とも正しく測るのは無理とされる。
縦横成分を正確に測ると、その影響で波が乱れ、斜め成分が正しく測れないからだ。一方の誤差を下げると他方の誤差が上がる関係で精度に一定の限界がある。その限界を示す式が1927年に提唱されたハイゼンベルクの不等式で、80年以上も正しいとされてきた。
東北大の枝松圭一教授は、波を乱しにくい「弱測定」という高精度の手法で、縦横成分と斜め成分の誤差の関係を測った。その結果、ハイゼンベルクの不等式では1以上になるはずの誤差が実験では0.7になるなど、同不等式が成り立たないことが示された。
一方、小澤の不等式は満たされた。また、小澤の不等式を改良して新しく提案されたブランシアードの不等式も満たしていた。測定精度の本当の限界に近い結果だという。
小澤教授は「精度の限界に迫った意味は大きい。ヒッグス粒子のような素粒子実験の精度向上や、量子暗号通信の実用化にもつながる」と話す。
【ハイゼンベルクの不等式】 独のノーベル賞物理学者ハイゼンベルクが1927年、電子などの極小の世界では、粒子の正確な測定に限界があり、必ず誤差が出るとの「不確定性原理」を提唱。誤差の出方を、不等式で表した。小澤教授はこの式に誤りを発見し、これまで考えられていたよりも誤差が少なくなる例があることを新たな不等式で示した。
(2013年12月25日 中日新聞朝刊3面より)