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中日新聞掲載の大学記事

2013.09.14

休めない、ただ働き・・・学生泣く ブラックバイト横行 正社員減り重いしわ寄せ

■21日に電話相談

 若者に過酷な労働をさせ、使い捨てにする「ブラック企業」。職場の非正規雇用が増える中、学生アルバイトの間でも「労働内容が給料に合わない」「辞めたいのに辞めさせてくれない」などの問題が進んでいる。法令違反が疑われる「ブラックバイト」に、学生たちが翻弄(ほんろう)されている。(柚木まり)

 塾講師のバイトを「休みたい」と申し出た名古屋市の男子大学生(20)は、正社員から嫌そうな顔をされた。「担当している子どもがいるでしょ。責任を持ってやってね」

 時給1000円の約束だったが、給料として計算されるのは実際に授業をした3時間分だけ。準備と授業後の事務作業の計3時間は無償。だから本当の時給は500円の計算だ。大学の試験前でも休めないことが多かった。

 社員1人に対し、講師7人は全員、学生のバイト。生徒が試験で目標点に達しないと「なぜできなかったのか」と追及された。「拘束時間が長すぎて割に合わなかった。1人暮らしでバイトなしでは生活できないのに」

 学生バイトの実態に詳しい大内裕和・中京大教授(教育学)が挙げるブラックバイトの定義は(1)法令違反の疑いがある(2)勤務を断れないなど労働環境が悪い(3)バイトに求める仕事が正社員並み−の3点。大内教授が6〜7月、学生約500人にアンケートした結果、ブラックバイトが疑われたのは100人以上。バイト経験者の3人に1人に上った。

 レジの金額が合わなかったため「ただ働き」の残業を強いられたり、売れ残った商品をノルマで買わされた例も。試験前でも休みをもらえず、中退した学生もいたという。

 厚生労働省が発表した7月の有効求人数は213万人を超え、2008年のリーマン・ショック以来、最高となる水準が続く。アルバイト情報誌「an」を発行するインテリジェンス(東京)によると、7月の全国平均時給は988円で、前月比14円増と好調だ。

 しかし、4〜6月期の非正規労働者数が前年同期比6・0%増だったのに、正社員は1・6%減。ブラックバイトが横行する背景に、正社員の減少に伴ってバイトの負担が重くなっていることがあり、大内教授の調査で「バイト先で正社員を一度も見たことがない」と答えた学生もいた。

 首都圏では今月、被害学生らが労組を結成した。大内教授は「学生時代からブラックバイトになじんでしまうと、就職した後もブラック企業であることに気付かない。バイトだから仕方がないと思わないでほしい。法令違反を許さず、立場の弱い学生を社会全体で救う仕組みが必要」と話す。

 名古屋北部青年ユニオンは21日午前10時〜午後4時、ブラックバイトなどに困っている若者向けの電話労働相談=電052(912)5128=を実施する。

【ブラック企業】 低賃金や長時間の単純労働、パワーハラスメントなど、違法な労働条件や待遇が常態化している企業。若者などが過酷な労働を強いられて退職に追い込まれることが多く、離職率が極端に高い。厚生労働省は今月、過去の法令違反などに基づき、約4000社の実態調査を開始。1日の電話相談には賃金不払いのサービス残業をはじめ1000件以上が寄せられ、半数を20〜30代が占めた。

(2013年9月14日 中日新聞夕刊13面より)
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