HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > 全て
2012.09.07
孤立難民に寄り添う 名大院生が支援室運営
■「認定前は不安」 日本語習得、子の教育まで
孤立している難民に寄り添いたい。そんな思いが支えている。名古屋大大学院国際開発研究科2年の羽田野真帆さん(23)=岐阜県可児市=は、紛争や政情不安で母国を逃れた難民のため、大学3年から日本語教室を開き、夏からは、NPO法人難民支援協会の名古屋支部となる「名古屋難民支援室」(中区丸の内)の運営も任されている。若い力は難民問題に取り組む弁護士や大学教授にも一目置かれる存在になった。
名古屋市西区のマンションの一室。「食べます。食べません。飲みます。飲みません」。日本語の語彙(ごい)や文法を外国人に教える羽田野さんがいた。「1人でいると暗くなる。教室で仲間と会えると安心する」。バングラデシュ人の男性(40)がほほ笑んだ。
2009年12月から毎週土曜日午後に開いている「もっと日本語教室」。ミャンマー、バングラデシュ、ルワンダ、ジンバブエなどから来て、日本政府に難民認定を申請中の10人前後が通う。日本人ボランティア15人ほどが交代で教え、受講料は無料。教室のスペースは難民支援活動で知り合った人から無償で借り受けた。
羽田野さんは小学校高学年のころ、米国ノースカロライナ州で過ごした。黒人などマイノリティーの多い現地校に通い、中東の紛争地域からの移住者もいた。「人種を超え、多様性を認める大切さを実感した」
愛知県立大でスペイン語を学ぶ傍ら、難民関連の講演会に参加してミャンマーやベトナムの難民の声に触れた。「寄り添いたい」という思いはすぐに行動へ。難民支援サークルを結成して講演会を企画し、日本語教室も開いた。
7月、難民申請の手続き、日本語の習得、医療、子どもの就学まで一貫して支援することを目的に、難民支援協会が独立行政法人医療福祉機構から補助金を受けて開設した名古屋難民支援室のコーディネーターに抜てきされた。今後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とも連携して難民の実態調査をするという。
日本語教室にボランティアとして参加する名大大学院の伊藤愛さん(24)は「彼女の積極的な行動が共感を呼び、若い世代が難民支援に関心を持つようになったと思う」と評価する。
支援する外国人には、他人名義のパスポートで来日したり、滞在ビザが切れたりして入国管理局に収容後に仮放免されている人もいる。大学の友人から「本当に難民なの? 出稼ぎじゃないの」「違法状態で日本に住んでいる人の世話をして何になるの」と問われることもある。
「政府はそうした外国人の難民認定の審査に慎重になるのは理解できる」と羽田野さん。それでも、難民認定まで医療保険もなく、仕事することを許されず、外務省の外郭団体から1日わずか1500円の援助を受けて暮らす人もいる。「そんな不安定な生活を支えられるのは市民と思う。真に助けが必要な人を見逃さないために活動を続けたい」
■名古屋入管 申請が急増
法務省によると、2011年は全国で1867人が難民申請したが、認定は21人にとどまり、不認定のうち248人が人道的な配慮が必要として在留を許可された。近年、名古屋入国管理局に申請する外国人が急増。11年は225人で、10年の3倍、06年の11倍に上った。全国難民弁護団連絡会議事務局の杉本大輔さん(35)は「東海地方は製造業が盛んで外国人労働者が多い。外国人コミュニティーで難民申請制度が周知されたのかもしれない」と分析する。
(2012年9月7日 中日新聞朝刊33面より)
孤立している難民に寄り添いたい。そんな思いが支えている。名古屋大大学院国際開発研究科2年の羽田野真帆さん(23)=岐阜県可児市=は、紛争や政情不安で母国を逃れた難民のため、大学3年から日本語教室を開き、夏からは、NPO法人難民支援協会の名古屋支部となる「名古屋難民支援室」(中区丸の内)の運営も任されている。若い力は難民問題に取り組む弁護士や大学教授にも一目置かれる存在になった。
名古屋市西区のマンションの一室。「食べます。食べません。飲みます。飲みません」。日本語の語彙(ごい)や文法を外国人に教える羽田野さんがいた。「1人でいると暗くなる。教室で仲間と会えると安心する」。バングラデシュ人の男性(40)がほほ笑んだ。
2009年12月から毎週土曜日午後に開いている「もっと日本語教室」。ミャンマー、バングラデシュ、ルワンダ、ジンバブエなどから来て、日本政府に難民認定を申請中の10人前後が通う。日本人ボランティア15人ほどが交代で教え、受講料は無料。教室のスペースは難民支援活動で知り合った人から無償で借り受けた。
羽田野さんは小学校高学年のころ、米国ノースカロライナ州で過ごした。黒人などマイノリティーの多い現地校に通い、中東の紛争地域からの移住者もいた。「人種を超え、多様性を認める大切さを実感した」
愛知県立大でスペイン語を学ぶ傍ら、難民関連の講演会に参加してミャンマーやベトナムの難民の声に触れた。「寄り添いたい」という思いはすぐに行動へ。難民支援サークルを結成して講演会を企画し、日本語教室も開いた。
7月、難民申請の手続き、日本語の習得、医療、子どもの就学まで一貫して支援することを目的に、難民支援協会が独立行政法人医療福祉機構から補助金を受けて開設した名古屋難民支援室のコーディネーターに抜てきされた。今後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とも連携して難民の実態調査をするという。
日本語教室にボランティアとして参加する名大大学院の伊藤愛さん(24)は「彼女の積極的な行動が共感を呼び、若い世代が難民支援に関心を持つようになったと思う」と評価する。
支援する外国人には、他人名義のパスポートで来日したり、滞在ビザが切れたりして入国管理局に収容後に仮放免されている人もいる。大学の友人から「本当に難民なの? 出稼ぎじゃないの」「違法状態で日本に住んでいる人の世話をして何になるの」と問われることもある。
「政府はそうした外国人の難民認定の審査に慎重になるのは理解できる」と羽田野さん。それでも、難民認定まで医療保険もなく、仕事することを許されず、外務省の外郭団体から1日わずか1500円の援助を受けて暮らす人もいる。「そんな不安定な生活を支えられるのは市民と思う。真に助けが必要な人を見逃さないために活動を続けたい」
■名古屋入管 申請が急増
法務省によると、2011年は全国で1867人が難民申請したが、認定は21人にとどまり、不認定のうち248人が人道的な配慮が必要として在留を許可された。近年、名古屋入国管理局に申請する外国人が急増。11年は225人で、10年の3倍、06年の11倍に上った。全国難民弁護団連絡会議事務局の杉本大輔さん(35)は「東海地方は製造業が盛んで外国人労働者が多い。外国人コミュニティーで難民申請制度が周知されたのかもしれない」と分析する。
(2012年9月7日 中日新聞朝刊33面より)