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中日新聞掲載の大学記事

2012.08.09

抗がん剤から液晶 幅広い分野の材料 ビアリール化合物 簡単合成

■名大院教授ら発表 希少金属いらず

 抗がん剤やアルツハイマー抑制薬などの医薬から、液晶、有機エレクトロルミネッセンス(EL)まで幅広い分野の材料として使われる「ビアリール化合物」を容易に合成する方法を、名古屋大大学院理学研究科の伊丹健一郎教授らのグループが見つけた。米化学会誌「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー」電子版に8日、発表した。

 ビアリール化合物の製造には、構造の違うナノ(10億分の1)メートル単位の炭素分子同士を結びつける「クロスカップリング反応」が使われている。ノーベル化学賞を受賞した鈴木章、根岸英一両博士らが考案した鈴木カップリングや根岸カップリング反応を利用するのが一般的だ。

 ただ、あらかじめ炭素分子に極小の金属を取り付けるなど複雑な加工が必要なうえ、反応を進める触媒に高価な希少金属「パラジウム」を使わなければならない課題がある。

 伊丹教授らは石油から取れるため手に入りやすい炭素原子「芳香族化合物」と、簡単に合成できる「芳香族エステル」を原料に活用。パラジウムの代わりには安価なニッケルを用い、カップリング反応を進められる触媒を合成した。

 伊丹教授は「産業界では、手軽なカップリング法への期待が大きかった。広く使われるようになるはずだ」と話している。

(2012年8月9日 中日新聞朝刊3面より)

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