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中日新聞掲載の大学記事

2012.07.13

東海学院大のメンタルフレンド 結成15年 支援する学生も成長

 東海学院大(各務原市那加桐野町)で心理学を学ぶ学生らのボランティアグループ「メンタルフレンド」が結成15年を迎えた。家庭訪問を通じ、不登校やひきこもりの子どもと向き合う。メンバーの中には、自身も同じ苦しみを抱えてきた者も少なくない。(小笠原寛明)

 6月中旬、JR名古屋駅前のビルの会議室。不登校を考えるシンポジウムで、メンバーらは不登校の家庭を描いた劇を演じた。終了後、母親役の優香さん(仮名)の目に涙が光った。

 「母親を思い出していた」

 幼いころ、一緒に過ごした記憶がない。経理の仕事で毎日、帰りが遅かった。炊事や洗濯は優香さんの役目。ねぎらいの言葉の代わりに、「給料」と言って小銭を渡された。

 大学2年の春、同級生の誘いで活動に顔を出すように。毎週末の勉強会で自身の生い立ちを振り返り、抑えてきた感情に気付いた。「私は家政婦じゃない」。生まれて初めて母親に反抗した。

 カウンセリングの基礎を学び、初めて不登校の家庭を訪問したのは3年の冬。依頼先の中2の少女が、かつての自分と重なった。菓子作りが趣味という少女とクッキーやパイを作り、時折、こぼす母親への不満に、一緒にため息をついた。

 メンタルフレンドを指導する長谷川博一教授(臨床心理学)は「目的は子どもを学校に行かせることではない」と言う。友達として子どもがやりたいことを一緒に楽しみながら時間を過ごす。「その子に会いたいな、という思いだけ。他に、目的はない」

 大学4年の和馬さん(仮名)は、小3で不登校になった。「熱血タイプ」の担任は「学校に来い」と毎日のように自宅に来た。「罪悪感と反発でよけい動けなかった」。中学は特別支援教室、高校は定時制に通った。

 自分の心の動きを知りたくて、入学した大学でメンタルフレンドの活動を知った。

 週1回、不登校の子どもたちの学習支援室を訪れる。「おれも昔、不登校でさ」。中2の少年と雑談中、ふと漏らしたことがあった。

 しばらくして少年が、母親を通じて「自分の将来はお先真っ暗だと思っていた。でも、今は不登校でも、大学だって行けるかもしれない」と話していたと聞かされた。少年は、大学生活やバイトの様子をしきりに聞くようになった。

 「不登校の過去への葛藤は今も続いている。でも、子どもたちの前で、だだくさ(いいかげん)な自分をさらけ出すと、自分の気持ちも楽になる。助けているんじゃない。持ちつ持たれつなんです」

 長谷川教授は「こうしたやり方が唯一の解決法ではない」と言う。実際、家庭訪問の打ち切りを申し出る家族や、「向いていない」とグループから去る学生もいる。その上でこう指摘する。

 「活動は、学生自身の心の癒やしにもつながっている。同じ体験を持つ同士だからこそ、心がつながりあえるのかもしれない」

■メンタルフレンド
東海学院大の学生ら約70人が登録。県内や近県の不登校や引きこもりの家庭、適応指導教室への訪問が活動の柱。本人と家族の依頼に基づき、勉強会で研修を重ねた学生を派遣する。週1回、2時間が原則。ボランティアだが、交通費のみ利用する家族が負担する。問い合わせは同大心理臨床研究室=電058(371)0945

(2012年7月13日 中日新聞朝刊岐阜近郊版より)

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