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中日新聞掲載の大学記事

2010.11.11

膵臓がん 広がる仕組みを解明 愛知医大 粘液物質が進行促進

 早期発見が難しい膵臓(すいぞう)がんで、がん細胞が拡散していくメカニズムを、愛知医科大の池田洋教授と稲熊真悟助教らの研究グループが突き止めた。がんの治療薬や早期発見法の開発につながる可能性が期待される。

 膵臓がんは膵臓と十二指腸を結ぶ膵管の内壁にできるが、内臓の深部にあるため早期発見が難しい。近くのリンパ節や神経に転移しやすく、他のがんに比べて治療が難しいといわれる。

 グループが着目したのは粘液物質「MUC5AC」。通常は胃の中にあり、粘膜を保護する役割を果たしているが、がんになった膵管にだけ、この粘液物質が検出されている。

 膵管のがん細胞を調べたところ、MUC5ACが内壁から発生し、細胞同士をつなぐ接着物質を壊すことが分かった。がん細胞の集団がバラバラになるため、より組織の深部まで進行していくと結論づけた。

 また、膵臓の細胞内で、がん細胞の増殖に影響することが分かっているタンパク質「GLI1」を遺伝子操作をして増やしたところ、約20種類の粘液物質のうちMUC5ACだけが増えることも判明。GLI1が、がん細胞を分断するMUC5ACを生み出すことが分かった。一連の研究内容は英国のがん専門誌「オンコジーン」電子版に発表した。

 研究を指導した笠井謙次准教授は「膵臓にMUC5ACが出ているかを調べれば、がんの早期発見につながる。MUC5ACの増加を抑える薬が開発されれば、がんの進行を防げるかもしれない」と話している。

(2010年11月11日 中日新聞夕刊12面より)
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