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お知らせ  2024.07.30

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コロナ治療薬で世界初 キラーT細胞 活用 藤田医大など

キラーT細胞を使った治療イメージ
 京都大と藤田医科大などの研究チームは30日、ヒトの胚性幹細胞(ES細胞)からつくった免疫細胞「キラーT細胞」を活用した、新型コロナウイルス感染症の治療薬の開発に世界で初めて成功したと発表した。コロナに感染して重症化したがん患者を対象に、2027年度に藤田医科大で臨床試験を始める。

 研究チームを率いる京大の河本宏教授(免疫学、藤田医科大客員教授)によると、既存のコロナ治療薬が効かず、重症化して肺炎などで亡くなる患者を救える可能性がある。臨床試験で有効性と安全性を確認し、5年後の実用化を目指す。

 キラーT細胞は、ウイルス感染細胞を殺傷する能力がある。開発した製剤は、あらゆる細胞に変わるES細胞を使い、コロナに感染した細胞を感知する機能を持たせた遺伝子を組み込んでキラーT細胞を作製。患者に点滴で投与し、感染細胞を死滅させる。研究では、ES細胞から作製したキラーT細胞とコロナに感染したことを想定した肺の組織細胞を同じ環境で培養したところ、12時間後にコロナに感染した想定の細胞が9割ほど死滅。河本教授は「十分に機能を評価できた」と話し、今月に特許を出願した。

 他人由来のES細胞を患者に投与すると拒絶反応が起きるため、拒絶されないように遺伝子を改変した。副作用の可能性は低いとし、将来的に500万~1千万円で製品化を目指す。

 藤田医科大は、流行初期から新型コロナ患者を受け入れるなど臨床データが豊富にあり、細胞を培養して製剤をつくる専用施設を持つ。同大血液内科で27年度から始める臨床試験は、免疫が低下したがん患者がコロナに感染して重症化した場合を想定する。

 現在、新型コロナは国内で11度目の流行期を迎え、重症化リスクの高い患者は一定数いる。同大で対象となる患者は年間10人以上おり、川瀬孝和准教授(血液内科)は「従来の治療薬だけでは重症化を防げないこともあり、新たな製剤への期待は大きい」と話す。

 新たな変異株が現れるとワクチンで獲得した抗体は効果が小さくなるのに対し、キラーT細胞は「すべての変異株に効く」(河本教授)。今回の技術を使えば、新たなウイルス感染症が流行した場合でも100日以内に治療薬をつくることができるという。河本教授は「ウイルスの流行初期に亡くなる人を防げる可能性がある」と話している。

◇キラーT細胞
 一度感染したウイルスなどを記憶して、次に同じものに出合ったときに効果的に対応できるようにする「獲得免疫」で働くリンパ球の一種。ウイルスに感染したり異常のあったりする他の細胞を特定して殺傷する能力を持つ。表面に「受容体」という目のような働きをするタンパク質がついていて、ウイルスなどの異物を認識する。細胞傷害性T細胞ともいう。

(2024年7月30日 中日新聞朝刊1面より)

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