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お知らせ  2024.06.16

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痛みの感情再現し医学生評価 AI患者 リアルな面接

模擬患者のアバター(後方)を仮想空間に映すシステムを開発する藤田医科大の石原慎教授(左)と名古屋工業大の李晃伸教授 =名古屋市昭和区の名工大で

模擬患者のアバター(後方)を仮想空間に映すシステムを開発する藤田医科大の石原慎教授(左)と名古屋工業大の李晃伸教授 =名古屋市昭和区の名工大で

■藤田医科大×名工大 5年間で開発目標

 医学生が臨床実習に出る前に行う模擬患者による面接試験について、人工知能(AI)を搭載したアバター(分身)を相手に仮想空間で面接ができるようにする研究を、藤田医科大(愛知県豊明市)と名古屋工業大(名古屋市)が共同で始めた。患者の痛みや感情をリアルに伝える音声技術を開発し、自然な対話の再現を目指す。地方の医療人材が不足する中、AIが試験の評価まで代替することで医師の教育業務の負担を減らし、患者の診察時間を確保することが期待される。(平井良信)

 診察での患者とのやりとりを想定した面接試験は、病院での臨床実習に出る前の医学部3、4年生が受験する。模擬患者は、健康な人が事前に患者役の演技を学び、痛みや症状を伝える。ボランティアで全国に777人、藤田医科大には26人いるが、地方の大学では人材の確保や養成が課題になっている。

 仮想空間で模擬患者に代わるアバターは、4月に連携協定を結んだ藤田医科大と名工大の強みを生かす取り組みとして、本年度から5年間で開発する。AIによる対話技術で実績のある名工大の李晃伸教授(51)の技術を使い、学生が仮想現実(VR)ゴーグルを装着して、現実に近い面接試験を受けられるようにする。

 開発で鍵になるのは、患者が訴える痛みの感情をアバターがどこまで再現できるか。「胸が痛い」「頭が割れそう」など痛みの感情を再現する音声技術の開発は世界でも珍しく、模擬患者から集めた音声データをAIが学習し、声の出し方や表情でリアルな感情の再現を目指す。李教授は「さまざまな痛みのレベルの音声を集め、模擬患者の迫真の演技に近づけたい」と話す。

 最終的には、面接試験の評価までAIが自動でできることが目標だ。開発段階では、藤田医科大の医学生ら200人を目標にVRゴーグルを装着してもらい、模擬患者と会話する学生の視線や姿勢をセンサーで読み取り、データ化する。統一された基準で評価できるAIシステムを作り、面接官を務める医師の負担を減らすことを目指す。

 研究代表者の藤田医科大の石原慎教授(59)は「残業時間を減らす働き方改革が4月に始まり、医師が教育に割ける時間は限られている。AIで医師の仕事の負担を減らすことができれば、患者の診療に使える時間を増やすことにつながる」と話し、全国での活用を目標に掲げる。

(2024年6月16日 中日新聞朝刊23面より)

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