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2010.08.03
整備進む大学博物館 魅力アップ地域にも貢献
■キャンパスの目玉に 各地の施設と連携の動きも
博物館の整備に力を注ぐ大学が増えている。教育、研究の強化はもちろん、キャンパスの魅力アップやPR、地域貢献も大きな狙いだ。多くは無料で1般開放しており、近年は各地で大学博物館めぐりが人気。東海地方の大学でも、博物館の拡充や新設、連携の動きが相次いでいる。(嶋津栄之)
「オープンキャンパスで訪れた人に民族衣装を着てもらうなど、体験面でも工夫したい。外部の人が気軽に来館し、親しまれる施設にしたい」
そう話すのは、中部大(愛知県春日井市)の民俗資料室準備室の宇治谷恵室長。資料室を大幅に拡張し、来年4月に「民族資料博物館」(仮称)として開館させるため、国立民族学博物館から、ことし4月に責任者として招かれた。
資料室は国際関係学部の施設として1984年にスタート。アジアやアフリカなどの民俗資料約1300点を収蔵、展示しているが、図書館の2階にあって外部から入りにくく、手狭なのが悩みだった。「近年は日本でも増えているが、欧米の総合大学では博物館はスタンダードな施設。教育、研究に加え、文化の拠点施設も大学には必要」と宇治谷室長は話す。
新しい博物館のフロアは現在の300平方メートルから500平方メートルとなり、1階から直接入館できるようになる。さらに博物館法に基づく「博物館相当施設」の認定を受ける考えだ。宇治谷室長は「学芸員資格取得の際、今まで学生は外部の博物館で実習したが、相当施設になれば学内で可能」とし、新たな大学のセールスポイントにもつなげたいという。
一方、学園創立90周年の事業として、昨年3月に越原記念館を新設したのは、名古屋女子大(名古屋市瑞穂区)。福沢諭吉『学問のすゝめ』初版本をはじめ、約1万点の文献や資料を所蔵し、年数回の企画展などで紹介している。学園創始者の業績を紹介するコーナーやホールも備えた建物はキャンパス正面玄関にあるため、外部から入りやすいのも特徴だ。
記念館は建学精神を広く紹介するシンボル施設に位置づけられ、オープンキャンパスの際などには、展示している江戸時代の機織り機実演をはじめ、さまざまなイベントも実施している。担当の遠山佳治教授は「ここは大学の魅力を発信する拠点でもある。貴重な資料を大学外に公開することで、地域文化の向上にも役立ちたい」という。
一方、先行する大学博物館では連携の動きが始まっている。南山大人類学博物館(名古屋市昭和区)は、3月に明治大博物館と協定を結び、収蔵品の交換展示会や合同調査、学生交流をしていくことに。南山大人類学博物館は建物の老朽化や展示室が手狭などの課題があり、2013年には、同じキャンパス内の新校舎に移転、拡張される計画だ。青木清館長は「展示品や企画の幅が広がり、お互いの施設も活用できるなどメリットは多い」と話す。
ことし3〜7月には名古屋大博物館(同市千種区)とも協力し、初の合同企画展「縄文のタイムカプセル 貝塚」を名大側で開いた。名大博物館の足立守特任教授も「近隣の大学が連携を深めていけば、それぞれの博物館の魅力がより高まる」と意欲的だ。
全国的にも新たな動きがあり、9月には全国の私立大を軸にした新しい連携組織「ユニバーシティ・ミュージアム・ミーティング」が設立される予定だ。事務局を務める明治大中央図書館の伊能(いおく)秀明事務長(前明治大博物館事務長)は「大学間競争が激しくなる中、博物館は大学の存在価値を目に見える形で示すツールとして認識されている。今や全国に約360施設がある」とした上で「今まで独自に運営してきたが、予算も資源も限られている。今後は質を高めるためにも情報交換し、協力することも必要では」と意義を話す。
(2010年8月3日 中日新聞朝刊13面より)
博物館の整備に力を注ぐ大学が増えている。教育、研究の強化はもちろん、キャンパスの魅力アップやPR、地域貢献も大きな狙いだ。多くは無料で1般開放しており、近年は各地で大学博物館めぐりが人気。東海地方の大学でも、博物館の拡充や新設、連携の動きが相次いでいる。(嶋津栄之)
「オープンキャンパスで訪れた人に民族衣装を着てもらうなど、体験面でも工夫したい。外部の人が気軽に来館し、親しまれる施設にしたい」
そう話すのは、中部大(愛知県春日井市)の民俗資料室準備室の宇治谷恵室長。資料室を大幅に拡張し、来年4月に「民族資料博物館」(仮称)として開館させるため、国立民族学博物館から、ことし4月に責任者として招かれた。
資料室は国際関係学部の施設として1984年にスタート。アジアやアフリカなどの民俗資料約1300点を収蔵、展示しているが、図書館の2階にあって外部から入りにくく、手狭なのが悩みだった。「近年は日本でも増えているが、欧米の総合大学では博物館はスタンダードな施設。教育、研究に加え、文化の拠点施設も大学には必要」と宇治谷室長は話す。
新しい博物館のフロアは現在の300平方メートルから500平方メートルとなり、1階から直接入館できるようになる。さらに博物館法に基づく「博物館相当施設」の認定を受ける考えだ。宇治谷室長は「学芸員資格取得の際、今まで学生は外部の博物館で実習したが、相当施設になれば学内で可能」とし、新たな大学のセールスポイントにもつなげたいという。
一方、学園創立90周年の事業として、昨年3月に越原記念館を新設したのは、名古屋女子大(名古屋市瑞穂区)。福沢諭吉『学問のすゝめ』初版本をはじめ、約1万点の文献や資料を所蔵し、年数回の企画展などで紹介している。学園創始者の業績を紹介するコーナーやホールも備えた建物はキャンパス正面玄関にあるため、外部から入りやすいのも特徴だ。
記念館は建学精神を広く紹介するシンボル施設に位置づけられ、オープンキャンパスの際などには、展示している江戸時代の機織り機実演をはじめ、さまざまなイベントも実施している。担当の遠山佳治教授は「ここは大学の魅力を発信する拠点でもある。貴重な資料を大学外に公開することで、地域文化の向上にも役立ちたい」という。
一方、先行する大学博物館では連携の動きが始まっている。南山大人類学博物館(名古屋市昭和区)は、3月に明治大博物館と協定を結び、収蔵品の交換展示会や合同調査、学生交流をしていくことに。南山大人類学博物館は建物の老朽化や展示室が手狭などの課題があり、2013年には、同じキャンパス内の新校舎に移転、拡張される計画だ。青木清館長は「展示品や企画の幅が広がり、お互いの施設も活用できるなどメリットは多い」と話す。
ことし3〜7月には名古屋大博物館(同市千種区)とも協力し、初の合同企画展「縄文のタイムカプセル 貝塚」を名大側で開いた。名大博物館の足立守特任教授も「近隣の大学が連携を深めていけば、それぞれの博物館の魅力がより高まる」と意欲的だ。
全国的にも新たな動きがあり、9月には全国の私立大を軸にした新しい連携組織「ユニバーシティ・ミュージアム・ミーティング」が設立される予定だ。事務局を務める明治大中央図書館の伊能(いおく)秀明事務長(前明治大博物館事務長)は「大学間競争が激しくなる中、博物館は大学の存在価値を目に見える形で示すツールとして認識されている。今や全国に約360施設がある」とした上で「今まで独自に運営してきたが、予算も資源も限られている。今後は質を高めるためにも情報交換し、協力することも必要では」と意義を話す。
(2010年8月3日 中日新聞朝刊13面より)