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2010.06.11
環境に優しい不斉合成 名大大学院グループ成功
■ヨウ素活用、副産物は水 医薬品への応用期待
うがい薬や消毒薬に使われるヨウ素の化合物を触媒に使い、副産物が水しか残らないという、環境に優しい不斉合成に名古屋大大学院工学研究科の石原一彰教授のグループが世界で初めて成功した。医薬品などへの応用が期待される。米科学誌「サイエンス」に11日、発表した。
石原教授によると、グループはこれまで不斉合成で使われなかった無機ヨウ素化合物を触媒に使い、過酸化水素水をエネルギーにして原材料を酸化反応させた。その結果、「ベンゾフラン骨格」という医薬効果が期待できる構造を持つ化学物質の合成に成功した。
触媒には希少金属が多く使われるが、それ以上に素早く高純度で目的の生成物が合成できた。廃棄される副産物は水だけだった。
合成した物質は、アルツハイマー病や抗がん剤、高脂血症の新薬開発につながる可能性がある。ヨウ素は日本の産出量が世界2位で入手しやすく、希少金属に代わる触媒として期待できるという。
グループは既に、有機ヨウ素化合物を触媒に使う不斉合成の手法を開発していたが、反応後に有害な副産物が出る難点があった。
石原教授は「金属の代わりにヨウ素を活用し、過酸化水素を用いて反応させることができたのは、環境調和型の有機合成技術の飛躍的な進歩につながる成果」と話している。
不斉合成に詳しい徳島大薬学部の落合正仁教授は「これまでよりかなり進んだ環境調和型の研究成果だ」と評価している。
■不斉合成
同じ分子式でも、右手と左手のように、対称の関係になっている有機化合物があり、その片方だけを作り出す方法。両者には働きに大きな違いがある。名古屋大特別教授の野依良治・理化学研究所理事長は金属原子を含んだ触媒で成功し、ノーベル化学賞を受賞した。
(2010年6月11日 中日新聞朝刊3面より)
うがい薬や消毒薬に使われるヨウ素の化合物を触媒に使い、副産物が水しか残らないという、環境に優しい不斉合成に名古屋大大学院工学研究科の石原一彰教授のグループが世界で初めて成功した。医薬品などへの応用が期待される。米科学誌「サイエンス」に11日、発表した。
石原教授によると、グループはこれまで不斉合成で使われなかった無機ヨウ素化合物を触媒に使い、過酸化水素水をエネルギーにして原材料を酸化反応させた。その結果、「ベンゾフラン骨格」という医薬効果が期待できる構造を持つ化学物質の合成に成功した。
触媒には希少金属が多く使われるが、それ以上に素早く高純度で目的の生成物が合成できた。廃棄される副産物は水だけだった。
合成した物質は、アルツハイマー病や抗がん剤、高脂血症の新薬開発につながる可能性がある。ヨウ素は日本の産出量が世界2位で入手しやすく、希少金属に代わる触媒として期待できるという。
グループは既に、有機ヨウ素化合物を触媒に使う不斉合成の手法を開発していたが、反応後に有害な副産物が出る難点があった。
石原教授は「金属の代わりにヨウ素を活用し、過酸化水素を用いて反応させることができたのは、環境調和型の有機合成技術の飛躍的な進歩につながる成果」と話している。
不斉合成に詳しい徳島大薬学部の落合正仁教授は「これまでよりかなり進んだ環境調和型の研究成果だ」と評価している。
■不斉合成
同じ分子式でも、右手と左手のように、対称の関係になっている有機化合物があり、その片方だけを作り出す方法。両者には働きに大きな違いがある。名古屋大特別教授の野依良治・理化学研究所理事長は金属原子を含んだ触媒で成功し、ノーベル化学賞を受賞した。
(2010年6月11日 中日新聞朝刊3面より)