進学ナビ

HOME > 中日新聞掲載の大学記事 > 全て

中日新聞掲載の大学記事

2017.03.21

調査個体は全て「日本種」 大谷川のオオサンショウウオ

■木之本の守る会 「積極的な保護の契機に」

 日本種か、外来種との交雑種か−。長浜市木之本町古橋の大谷川に生息する国の特別天然記念物「オオサンショウウオ」を巡り、地元で関心を集めていた謎がほぼ解き明かされた。長浜バイオ大(長浜市)などの調査で出た答えは「日本種」。各地で交雑が問題となる中、大谷川の個体は昔からすんでいる在来種の可能性が高まった。(渡辺大地)

 大谷川では2002年、地元の男性が1匹を見つけた。その後、県や地元の保護団体「古橋のオオサンショウウオを守る会」の調査で、昨年までに72匹を確認した。一方、発見以前は目撃情報がなかったため、誰かが捨てたという疑念も地元であった。保護の根幹に関わるだけに、日本種かどうかは関心事だった。

 疑念の背景には、京都市を流れる鴨川での交雑の問題がある。オオサンショウウオに詳しい京都大大学院の西川完途(かんと)准教授などによると、鴨川では1970年代ごろ、食用に輸入された中国種が捨てられたり、逃げたりして日本種との交雑が進んだ。今は9割以上が交雑種という。

 三重県名張市の滝川でも交雑が進み、地元の保護団体などが捕獲と隔離に取り組んでいる。国内のオオサンショウウオは、おおむね岐阜県以西で確認されているが、交雑種は滋賀、三重、京都を含む近畿2府3県で見つかっている。

 こうした現状を受け、長浜市の守る会は長浜バイオ大の研究室に調査を依頼。大学院博士課程で動物学を研究する小松由可理さん(27)が中心となり、2014年から解明を進めてきた。西川准教授らの協力も得て行った遺伝子解析の結果、これまで調べた22個体は全て「日本種」との結果が得られた。

 小松さんは「大谷川の全ての個体を調査したわけではないので、結論を出すのは早い」と慎重だが、「保護活動で大事なのは地域に根差した生き物を残すこと。この結果をどう生かすか考えていきたい」。守る会事務局長の村上宣雄さん(74)は「国内の別の場所の日本種が放されたことは否定できないが、在来種の可能性は高まった。行政が積極的に保護に関わる契機になれば」と期待する。

 西川准教授によると、文化財保護法が保護の対象とするのは在来種のみ。交雑種の増加は、保護活動に法的な矛盾を生じさせかねないという心配もあった。西川准教授は「大谷川は貴重な生息地と言え、滋賀のオオサンショウウオ保護の出発点になる。今後は交雑種が入り込まないよう、監視などの態勢が必要」と話している。

(2017年3月21日 中日新聞滋賀版より)
  • X

戻る < 一覧に戻る > 次へ