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中日新聞掲載の大学記事

2016.04.12

養護施設の子に学習支援 豊橋のNPO法人 言葉掛け意欲引き出す

 豊橋市老津町のNPO法人「手しごと屋豊橋」が、児童養護施設「豊橋平安寮」(船渡町)で学習支援のボランティア活動を続けている。退職教員や大学生のメンバーが放課後や夜に寮を訪れて2年。心を開いて勉強に取り組む子も増えてきた。(小椋由紀子)

 「先生、丸つけて」。夜の寮。廊下に並べた机で、小学生の女の子が手しごと屋の河辺順子代表(63)に漢字ドリルを差し出す。「勉強楽しいよ」と話す女の子に河辺さんが言葉を掛ける。「その言葉、先生泣けるわ」

 平安寮は、2〜18歳の子ども約70人が虐待や経済的理由などで家族と離れて暮らす。手しごと屋は、高齢者の居場所づくりの一環で寮の子たちと遊びや食事で交流してきた。職員に「本当に必要なのは勉強の手助け」と聞き、元小学校教諭の河辺さんらが先生役を買って出た。

 当初は宿題を写したり、騒いだり、遠巻きに見たり。「いろんな事情を抱えて勉強に気持ちが向かないのは当たり前」と河辺さん。子どもたちを知るため、寮の職員や専門家を招いて勉強会も開いた。学習支援員の認定証も独自に作り、今では大学生も含め約20人がほぼ毎日通う。

 続けることで少しずつ変わってきた。子どもたちはおしゃべりや絵を楽しんだり、宿題や受験対策を教えてもらったり。愛知大4年の鈴木麻琴さん(21)は「はじめは戸惑ったけど、一対一でその子にあった勉強法を考え、伸びていく姿を見るとうれしい。じゃあ私もやろうって子も出てきた」と話す。

 寮生の女子高校生は「1人でやっても分かんないし、勉強する気はなかった」と打ち明ける。鈴木さんに出会い「この先生なら勉強したいと思った。音楽とかいろんな話をする。会うのがめっちゃ楽しみ」と笑う。

 平安寮の船坂典生副主任(43)は「寮では、きめ細かい指導が難しい現状もある。河辺さんらが通ってくれることで徐々に人間関係ができ『気にかけてくれるなら勉強しよう』という意欲につながっている」と話す。

 手しごと屋ではこの春、支援員を務めてきた大学生6人中4人が卒業。若手の「先生」を募っている。(問)手しごと屋=0532(23)2099

(2016年4月12日 中日新聞朝刊東三河版より)
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