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中日新聞掲載の大学記事

2009.05.31

中部大教授 武田邦彦さん 環境・温暖化対策 独自の知恵で改善を

 −著書でレジ袋の削減運動や、ペットボトルのリサイクルに疑問を投げ掛けている。市の政策と矛盾するが。

 経営アドバイザーとしての仕事は、河村市長がマニフェストに盛り込んだ環境政策を実現させることなので自分の主張を前面に押し出すつもりはない。昨日まで分別していたのに、今日からやらないというのは現実としてできない。そこは尊重しなければならない。

 もちろん学者としての研究成果はこれからも発言する。市と違う視点から問題提起することは、市長が期待していることでもある。

 −まず手掛けたいことは?

 名古屋独自の地球温暖化対策だ。東京や大阪は気温が上がっても、名古屋では気温の上昇が抑えられ、住みやすくなったということにしたい。市長はこれを「冷暖房のいらない街」と表現している。

 −どんな手法で。

 観念的な環境運動ではなく、実感のある環境改善をしたい。一番大切なのは成功例づくり。市全体では広すぎるので、気温を下げたいという学区があれば、市が住民と協力し積極的に対策を打つ。そこが隣の学区より涼しくなれば、他の地域にも広がっていく。

 −具体的な対策は?

 アスファルトで覆われた都市は、地表から水分が蒸発し大気を冷やす働きが小さい。舗装された歩道の一部を取って緑を植えたり、昔、地域にあった小川を復活させたりする。風通しを良くすることも大事だ。

 −市長は名古屋の独自性にこだわっている。

 例えば、国が太陽光発電の補助金を出すから、うちもやった方がいいということになりがち。基本戦略は東京からやってきて、地方は対症療法を決めているだけだ。そうではなく、名古屋の知恵で名古屋をつくるのが市長の考え方。名古屋大などに環境分野の立派な研究者はいるのに成果はもっぱら東京で発表している。もっと地元で生かしたい。 (聞き手・白石亘)

■たけだ・くにひこ
 65歳。東京大教養学部卒。旭化成工業入社。1993年に芝浦工業大教授に転じ、名古屋大教授をへて2007年から現職。「偽善エコロジー」「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」など著書多数。内閣府原子力委員会専門委員も務める。

(2009年5月31日 中日新聞朝刊市民版より)

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