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中日新聞掲載の大学記事

2014.05.04

脱原発 口ずさむのが使命 南山大出身のデュオ、軽快な曲制作

 「声を聞いて 汚された大地の 声を聞いて 奪われたふるさと」。毎週金曜の夜、名古屋市内の電力会社前で脱原発の抗議活動から、参加者が声を合わせる歌が生まれた。制作したのは、南山大出身の音楽デュオ。「押しつけではなく、誰もが口ずさめる歌を」。原発再稼働の動きが進む中、福島の現実、そしてデモ参加者の声を届けたい−。(奥田哲平)

 歌は「声を聞いて〜さよなら原発のテーマ〜」。音楽デュオ「マチルダマーチ」が昨年11月にレコーディングし、1000枚を制作。故忌野清志郎さんのバックバンドで活躍したトランペッター渡辺隆雄さんも協力し、軽快な曲に仕上がった。

 マチルダマーチはボーカル山口由貴さん(33)=同市南区、パーカッションのハセタクさん(37)=愛知県大府市=の2人で2007年8月に結成。サンバなどのブラジル音楽を取り入れ、働きながら東京を拠点に活動していたが、東日本大震災の福島原発事故が人生を変えた。

♪春の少し前のあの日変わった世界 安全な日常も思い込んでただけ

 2人は放射線測定器も購入して食べ物に気を使い、放射能汚染に神経をとがらせた。友人に原発の危険性を訴えて、首相官邸前のデモにも一市民として参加。すると、「覚悟したね」と言われてやるせなくなった。

♪広がる放射能 細胞を刻んで 私たちの未来を傷つけてゆく

 東京を離れることを決意し、12年末に名古屋に戻った。名古屋市東区の中部電力や関西電力東海支社前での抗議活動に参加して出会ったのは、同市天白区の主婦西英子さん(76)だった。

 西さんにも焦りがあった。ピークに数百人に上った抗議活動は最近は30人程度に。その一方で、4月には原発推進路線を明確にしたエネルギー基本計画が閣議決定され、原発再稼働が着々と忍び寄る。「今は来られなくても、原発再稼働を食い止めるその時に声を上げるために、みんなが参加しやすい歌が大事」。シュプレヒコールや演説ではない歌を2人に依頼した。

♪差し込んだそのコンセント 繋がる先には 誰かの命と引き換えのエネルギー

 脱原発を声高に叫ぶわけではない。ただ、故郷に帰還できない福島の現状を忘れてほしくない。2人はそんな思いを込めた。

 ハセタクさんは「若い人への橋渡しになれるんじゃないか。この曲を歌い続けるのが、私たちの使命」と言う。

 CDは1枚500円。問い合わせは西さん=電052(808)3241=へ。

(2014年5月4日 中日新聞朝刊30面より)

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