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中日新聞掲載の大学記事

2008.12.11

名大トリオ 金字塔 ノーベル賞授賞式

 花と音楽に満ちあふれた舞台の上に日本を代表する3人の科学者が並んだ。10日午後(日本時間11日未明)、ストックホルムのコンサートホールで催されたノーベル賞授賞式。物理学賞の小林誠さん(64)と益川敏英さん(68)、化学賞の下村脩さん(80)らの偉業を世界がたたえた。自然の謎に挑み真理の一部を手にした3人の晴れ姿は、後に続く学生や子どもへの最高のメッセージとなった。

緊張、淡々 晴れ姿

 モーツァルトの行進曲で華々しく始まった授賞式で、小林誠さんが全受賞者のトップを切ってカール16世グスタフ国王からメダルと賞状を受け取った。小林さんの次には益川敏英さん、下村脩さんと名大トリオが続いた。

 約1500人の招待客らが迎える中、えんび服姿の小林さん、益川さん、下村さんの順に登壇。鮮やかな花で彩られた壇上中央にはノーベルの胸像。益川さんが緊張した表情を見せた一方、小林さんと下村さんは淡々とした顔つきで席に着いた。それでも益川さんは、オーケストラが演奏する中、指でリズムを取る余裕も見せた。

 プレゼンターが「素粒子物理に不可欠である対称性の破れに関する画期的業績で受賞された。心よりお喜び申し上げます」と日本語で紹介すると、会場からはどよめきが。小林さんはグスタフ国王から賞状とメダルを受け取ると時折、笑顔を見せた。益川さんは、終始硬い表情で、通常3回するおじぎが1回多かった。

 下村さんも日本語で業績を紹介され、笑顔で賞状とメダルを受け取ると、グスタフ国王と二、三言葉を交わした。

 授賞式に向かう直前のホテルでは、小林さんはオレンジ色の着物姿の妻恵美子さんにえんび服を整えてもらうと、少し照れ笑い。「(授賞式は)間違わないようにやるだけです。自然体で」とリラックスしていた。

 益川さんは、薄茶色の着物姿の妻明子さんをくるりと回して着物をチェック。「緊張するわけないじゃない」と言いながらも少しぴりぴりしていた。

 えんび服は初めてという下村さんは「ノーベル賞を取るということは本当に大変なことなんですね」としみじみ語り「今日が無事終わってくれれば楽になります」と笑った。妻明美さんはえんじ色のドレス。「私も本当は着物を着られるといいんでしょうけど、もう長いこと着ていませんから」と話していた。(ストックホルム=星浩、広瀬和実)

亡き恩師も一緒に 故坂田教授と故平田教授

 名古屋大ゆかりの3人のノーベル賞受賞は、彼らの才能を引き出した今は亡き恩師2人を表彰の舞台へ引き上げた。

 8日に行われた記念講演では、小林誠さん、益川敏英さんは恩師の故坂田昌一教授の下、自由に議論した名古屋大の思い出を取り上げた。下村脩さんも名大の恩師で米留学を異例の博士号授与で後押ししてくれた故平田義正教授を写真付きで紹介した。

 故坂田教授は素粒子のクォークモデルの原型をつくり、湯川秀樹、朝永振一郎両博士に続くノーベル物理学賞に目されていた。益川さんは9日の会見で「坂田先生はノーベル賞を受賞しているべきだった」と語った。後輩の山脇幸一名大教授(62)は「小林さん、益川さんによって坂田さんがようやく晴れの舞台で評価された」と感慨深く語った。

 坂田教授は素粒子、平田教授は有機化学。専攻は違っていても、その研究室には自由闊達(かったつ)さと、独自の視点を重んじるという共通点があった。(ストックホルム=広瀬和実)

(2008年12月11日 中日新聞朝刊27面より)
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