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中日新聞掲載の大学記事

2014.02.27

炭素繊維複合材普及へ道筋 金沢工大など拠点来月完成 鵜沢ICC所長に聞く

 炭素繊維複合材で次世代インフラ構築を目指す金沢工業大などの産学連携事業が、2014年度から始まる文部科学省の「革新的イノベーション創出プログラム(COI)」に採択された。3月に完成する研究開発拠点「革新複合材料研究開発センター(ICC)」の鵜沢潔所長に今後の方針を聞いた。(瀬戸勝之)

 −私立大では唯一の中核拠点となった。

 私たちが一番明確に研究成果を生かす「出口」を示せた。次世代の社会インフラや住宅、海洋分野と具体的ニーズがある分野がターゲットだ。いずれも実用化への道筋が立っている。例えばインフラ構造材に軽くて強く、さびない炭素繊維複合材が普及したらどうか。簡単に持ち運べるし、溶かして成形し直せばリサイクルできる。鉄やコンクリートが主役の建築概念が覆されるだろう。

 −研究の主要テーマは。

 炭素繊維複合材の連続成形技術だ。今の製法は鉄なら江戸時代の鍛冶屋。鉄は高炉の登場で生産量が飛躍的に高まり産業革命につながった。植物繊維などバイオ原料の活用もテーマの1つ。実現には基礎研究の「川上」から実用化の「川下」まで、異分野の研究者が密接に連携することが不可欠であり、「一つ屋根の下」に集うICCは理想的な施設になる。

 −炭素繊維の活用の現状は。

 釣りざおやゴルフシャフトに始まって航空機、さらに今後5〜10年で自動車に広まると期待される。課題は、付加価値の高い部分を欧米に持っていかれていること。炭素繊維は日本生まれで世界の7割を生産するにもかかわらず、最終製品のシェアは1割に満たない。自動車への利用も独BMWが先行している。

 −早期の実用化を見込んでいる分野は。

 海洋分野だ。数年以内の実用化が見込める。まず風力発電のブレード(羽根)。風力発電は立地上の制約が少ない洋上が主流となり、発電効率を高めるため大型化が進む。海底油田のくみ上げパイプも有望だ。沖合の深い場所は埋蔵量が豊富だが、鉄製では重く強度が足りない。大型貨物帆船の帆も実証試験が既に始まっている。これらは、炭素繊維以外では代替できず手堅いニーズがある。

■革新的イノベーション創出プログラム
 少子高齢化や豊かな生活環境、持続可能な社会の3分野で、10年後を見通した研究開発課題に取り組む産学連携活動を支援する文部科学省の補助事業。全国で12の研究拠点が採択された。金沢工業大を中心とした組織には金沢大や北陸先端科学技術大学院大、東レ、コマツ産機、大和ハウス工業、三井海洋開発などが参加。補助額は2014年度から9年間で最大80億円。

(2014年2月27日 北陸中日新聞朝刊10面より)
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