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2013.04.13
ヒッグス 複合粒子か 物質「最小単位」揺らぐ 名大など 計算実験で推定
質量の起源とされ「神の粒子」ともいわれるヒッグス粒子が、複数の粒子で構成される「複合粒子」である可能性があることを、名古屋大を中心とするグループがコンピューターを使った計算実験で突き止めた。英エディンバラ大のヒッグスセンターで24日から開かれる研究集会で発表する。
成果を発表するのは、ノーベル物理学賞受賞者で名大素粒子宇宙起源研究機構の益川敏英特別教授、山脇幸一特任教授をはじめ、青木保道准教授ら計10人の研究者で構成するグループ。
ヒッグス粒子は、それ以上は分割できない「素粒子」と考えるのが世界の主流。複合粒子だった場合、クォークやレプトン、ゲージなど、現在は素粒子と想定されている粒子も、さらに細かい粒子から成り立っている可能性があり、人類にとって未知の世界が広がる。かつて物質の最小単位は原子だと考えられていたが、陽子や電子などさらに小さな粒子が見つかったのと同じような発見を意味する。
研究機構は、専用のスーパーコンピューターを導入。複合粒子の可能性を視野に、2種類の粒子からヒッグスを組み立てる計算実験を2年間続けた。
その結果、「フェルミ」と呼ばれる粒子などの2粒子で構成される1つの粒子が、質量などの点でヒッグスの性質を持つ兆候を捉えることに成功した。山脇特任教授は「現在の情報量は十分ではない。今後さらにデータを集める」と説明している。
欧州合同原子核研究所(CERN)の国際実験チームが昨年7月、ヒッグスとみられる新粒子を発見。理論と合致する兆候を示していることから、この粒子はヒッグス粒子であることが確実な状況となっている。
今回の実験結果はCERNの実験結果とも矛盾しない。しかし、複合粒子の確実な証拠とまではいえず、益川特別教授は「さらに時間をかけてコンピューター実験を続け、データを集めれば、ヒッグス粒子が複合粒子かどうか、もっとはっきりしてくる」と話している。
■ヒッグス粒子
英エディンバラ大のピーター・ヒッグス名誉教授らが1964年、理論的に提唱した粒子。あらゆるところにあるが目に見えず、通常は感知することができない。宇宙が始まった大爆発(ビッグバン)の100億分の1秒後に生まれ、海のように空間を満たしたとされる。宇宙誕生直後は素粒子に質量がなく、光速で飛び回っていた。しかし、ヒッグスの海にまとわりつかれて動きにくくなることで質量が生まれたと考えられている。
(2013年4月13日 中日新聞朝刊1面より)
成果を発表するのは、ノーベル物理学賞受賞者で名大素粒子宇宙起源研究機構の益川敏英特別教授、山脇幸一特任教授をはじめ、青木保道准教授ら計10人の研究者で構成するグループ。
ヒッグス粒子は、それ以上は分割できない「素粒子」と考えるのが世界の主流。複合粒子だった場合、クォークやレプトン、ゲージなど、現在は素粒子と想定されている粒子も、さらに細かい粒子から成り立っている可能性があり、人類にとって未知の世界が広がる。かつて物質の最小単位は原子だと考えられていたが、陽子や電子などさらに小さな粒子が見つかったのと同じような発見を意味する。
研究機構は、専用のスーパーコンピューターを導入。複合粒子の可能性を視野に、2種類の粒子からヒッグスを組み立てる計算実験を2年間続けた。
その結果、「フェルミ」と呼ばれる粒子などの2粒子で構成される1つの粒子が、質量などの点でヒッグスの性質を持つ兆候を捉えることに成功した。山脇特任教授は「現在の情報量は十分ではない。今後さらにデータを集める」と説明している。
欧州合同原子核研究所(CERN)の国際実験チームが昨年7月、ヒッグスとみられる新粒子を発見。理論と合致する兆候を示していることから、この粒子はヒッグス粒子であることが確実な状況となっている。
今回の実験結果はCERNの実験結果とも矛盾しない。しかし、複合粒子の確実な証拠とまではいえず、益川特別教授は「さらに時間をかけてコンピューター実験を続け、データを集めれば、ヒッグス粒子が複合粒子かどうか、もっとはっきりしてくる」と話している。
■ヒッグス粒子
英エディンバラ大のピーター・ヒッグス名誉教授らが1964年、理論的に提唱した粒子。あらゆるところにあるが目に見えず、通常は感知することができない。宇宙が始まった大爆発(ビッグバン)の100億分の1秒後に生まれ、海のように空間を満たしたとされる。宇宙誕生直後は素粒子に質量がなく、光速で飛び回っていた。しかし、ヒッグスの海にまとわりつかれて動きにくくなることで質量が生まれたと考えられている。
(2013年4月13日 中日新聞朝刊1面より)