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中日新聞掲載の大学記事

2013.03.05

運動機能維持装置 効果試す 寝たまま10日 模擬宇宙 愛知医大など実験

 愛知医科大(愛知県長久手市)と岐阜医療科学大(岐阜県関市)の研究チームが、宇宙空間での体への負担を再現するため、頭側を低くしたベッドに横になったまま10日間過ごすユニークな実験を始める。被験者の半数には体に重力のかかる装置を使った1日30分間の運動を課し、横になったままの被験者と体の機能を比較。装置の効果を実証する。

 研究チームは愛知医科大医学部の岩瀬敏教授(57)、西村直記講師(47)、岐阜医療科学大保健科学部放射線技術学科の田中邦彦教授(46)の3人。実証すれば宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)を通じ、国際宇宙ステーション(ISS)へ装置の採用を提案する構想だ。

 田中教授によると、無重力状態で長期間過ごすと筋肉の萎縮や骨密度の減少など体の機能が低下するほか、血液量の減少で地球への帰還後に立ちくらみしやすくなる。将来ISSへの長期滞在、有人火星探査などを実現させるには、無重力状態での体の機能低下を抑えなければならない。

 実験は「ベッドレスト」と呼び、頭側を6度下げる。ベッドに横たわっているだけでより多く血液や体液が頭部に流れるなど、体への負担が宇宙空間と似た条件をつくり出すことができるという。11日から開始する。

 被験者は成人男性8人で、4人は食事を含めてベッドに横たわったまま。ほかの4人は毎日、ベッドから担架で移動し、横になったまま自転車のペダルをこぐ運動ができる人工重力付加装置に乗る。頭側を軸に自動で回転する直径2.8メートルの装置で、遠心力で足側に重力をかけることで、機能低下を抑止できることを実証する。

 研究チームは昨夏、同じ装置を使い、被験者2人で予備実験。横たわったままだと筋肉量が数%減るが、装置を使う被験者は運動で筋肉量がわずかに増加したほか、骨や循環器機能の低下を抑えることができた。今回は本格的に実験を実施。被験者の人数を増やし、より効果が表れるよう人工重力や運動負荷の強さを調整した。

 研究チームは宇宙機構、米航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)から実験の同意を得ており、NASAスペースを想定して小型装置で実証する。

 田中教授は「将来の宇宙旅行の時代に必要な実験。宇宙医学だけでなく、筋萎縮や骨粗しょう症などの治療にも役立つのではないか」と期待している。

(2013年3月5日 中日新聞朝刊1面より)
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