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中日新聞掲載の大学記事

2012.07.26

エルニーニョ 熱帯雨林壊す 名大が警鐘

■70〜90年後 ボルネオ島

 世界有数の生物多様性を誇るマレーシア・ボルネオ島の熱帯雨林が、頻発が予測されているエルニーニョ現象による乾燥で70〜90年後に、壊滅的な打撃を受ける恐れがあることを、名古屋大地球水循環研究センターの熊谷朝臣准教授らのグループが突き止めた。計算上では、樹木が現在の6割にまで減り、熱帯雨林の生態系が崩壊する可能性がある。米地球物理学誌「ジャーナル・オブ・ジオフィジカル・リサーチ」の電子版に発表した。

 グループは、ボルネオを襲った1997年の異常乾燥に着目。太平洋赤道海域の海面水温が南米ペルー沖で高い状態となるエルニーニョ現象の発生が原因で、360年に一度の乾燥状態だった。

 研究では、97〜2001年までの4年間に、熱帯雨林で毎年6%ずつの樹木が枯れたことが分かった。枯れる割合は、ふだんの7倍に達した。

 英国の研究センターが公表する将来の気候変動予測を用いると、2080〜99年にエルニーニョ現象が現在よりも高頻度で発生することが判明。ボルネオの熱帯雨林でも、97年並みの異常乾燥が10年に一度で起こり、樹木が急激に減少する可能性が出てきた。

 世界で最も豊かだとされる生態系が失われる危険もあり、熊谷准教授は「熱帯雨林の危機で生物の多様性が失われ地球全体に悪い影響を与えるかもしれない。注視していく必要がある」と話している。

(2012年7月26日 中日新聞朝刊1面より)

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