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中日新聞掲載の大学記事

2012.07.25

名大 マウスで実験成功 幹細胞でリンパ管再生 リンパ浮腫治療へ道筋

 皮下脂肪から取り出した幹細胞を使い、切断されたリンパ管を再生することに、名古屋大大学院医学系研究科の室原豊明教授や清水優樹医師(いずれも循環器内科学)らのグループがマウスを使った実験で成功した。がん手術に伴うリンパ管の切断により腕や脚などが異常に膨らむ「リンパ浮腫」の治療につながる。

 リンパ浮腫は、乳がんでは手術後、5〜25%に現れ、国内に5万人以上の患者がいるとされる。清水医師は「これまで、リンパ浮腫を根本的に治療する方法はなかった。早期に臨床現場で使えるよう研究を進めたい」と話している。

 グループは、尾のリンパ管を人工的に切断したマウスに、さまざまな細胞になる能力を持つ幹細胞を投与。すると、切断されたリンパ管同士が伸びて結びつき、リンパ浮腫の症状が軽くなった。幹細胞はリンパ管の元になる細胞や切断された管自体に刺激を与え、再生を促す働きをしていた。

 皮下脂肪中の幹細胞は2001年に発見された。自分自身から取り出した幹細胞は、投与しても拒絶反応がないことから、臨床に応用しやすい利点がある。さらに、脂肪は体内に大量に存在するため、幹細胞を採りやすい。

 乳がんの手術では、転移を防ぐために周辺の器官も切除する必要がある。リンパ管はその際に切断され、リンパ液の流れが悪くなって老廃物がたまり、体の一部が異常に膨らむリンパ浮腫が引き起こされる。

 研究成果は米心臓協会誌「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ハート・アソシエーション」の電子版に掲載された。

(2012年7月25日 中日新聞朝刊3面より)

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