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中日新聞掲載の大学記事

2012.07.07

猛暑の前兆 北極にあり 気圧配置2010年は特異 三重大チーム 「今年兆しなし」

 2010年夏の記録的な猛暑は、年初から観測された北極圏の偏った気圧配置が影響していたことを、三重大大学院生物資源学研究科の立花義裕教授(気象学)の研究チームが突き止めた。今後、北極圏で猛暑の前兆現象を監視することで、夏に向けた長期予測の精度を高めることが期待される。

 立花教授によると、今年は前兆がみられず「10年のような猛暑にはならない見込み」という。研究成果は、5月にドイツの気候変動専門誌(電子版)に掲載された。

 北極圏の上空では、高気圧と低気圧が不定期で入れ替わる「北極振動」と呼ばれる現象があり、地球規模の気象へ影響を及ぼしている。研究チームは過去50年に及ぶ北極圏の気圧配置図を独自に解析した。

 その結果、平年は数日から数週間で入れ替わるが、10年だけは5月まで高気圧が居座り、6月に入って低気圧に覆われる傾向だったことが分かった。

 これにより北半球の日本や欧州などが夏に高気圧に覆われて気温が上昇。赤道付近の大西洋の海水温も高いままとなり、暖かい大気が北半球へと流れ込み、高気圧の勢力を強めた。さらに偏西風が高気圧と低気圧の間を蛇行するように吹き抜け、気圧の移動が妨げられたとみている。

 立花教授は「北極振動の観測はこれまで冬が中心だったが、年間を通じた観測により異常気象の予測法につなげることができる」と話している。

(2012年7月7日 中日新聞朝刊1面より)

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